新聞の報道で日本の大手損保会社が、中国の暴動特約の新規加入を停止したと伝えている。
保険には疎いので、このような保険サービスまでしているのを知らなかった。貿易保険では、デモやテロでの被害は免責条項になっている。
暴動特約の詳しい内容は分からないが、なぜこんな補償までするのだろうか?
暴動は予測することは不可能である。台風や天候等、自然災害は、過去のデータがあるので、ある程度は予測できる。でもテロや暴動は分からない。ましてや中国内である。
中国では、中国企業でも労働争議で、工場破壊・略奪が起きるのは、一般的なことである。
以前のブログでも書いたが、08年に訪問した中国のコイルセンターは、リーマン・ショックの後、従業員に焼き打ちされて、資材も全て持ち去られた。また吉林省の通化鋼鉄も07年の訪問したが、ここは国営であるのに、総経理が労働争議で殺されている。
工場を閉鎖する時に、突然ロックアウトして従業員を工場内に入れないのは、略奪から会社資産を守るためである。
損保会社は、東日本大震災の地震保険の支払いと、タイでの洪水被害の支払いで四苦八苦である。それに今度の中国での暴動被害の支払いも加わる。現在の損保会社経営は、危機的状況になっている。
もちろん再保険をかけているが、世界では地震保険の評判は悪いので、掛け率は高いであろう。
地震保険の保険料について、昨年大幅に上げたが顧客からのクレームで、再度下げざるを得なかった。もとは取れていないようだ。
十数年前には、英国のロイド保険が破産の危機に瀕した事がある。これは世界で大災害があると、再保険の最終的な受け手である、ロイド等老舗の保険会社に最後のしわ寄せがくるからである。災害が多い年は損保の経営状態が悪化する。
日本の損保会社は、海外での経験のノウハウの蓄積が豊富にある訳ではない。海上火災、自動車保険の延長線上で、顧客からの要望に応えて、海外での様々な特約事項を拡大してきたはずである。
それが暴動特約や洪水被害補償につながっていると思う。
これが完全に裏目に出た。よく知らないで補償すると痛い目にあう。
今回の件は、現地の事情を詳しく知らずに進出してしまった中小企業が、現地で様々な問題を抱えて、結局撤退するのに似ている。
大手損保会社の人を多数知っているが、およそ海外に詳しいとは思えない。現地の会社と提携したりしているようだが、メーカーや銀行並に海外ネットワークを持っているとは思えない。
新興国には大手の保険会社がなく、政府も補償の認識が低い。そのため大手企業は日系損保に海外工場での保険を依頼する。
対象国のリスク情報は、欧米の損保会社や現地保険会社から得ているだろうが、自社でノウハウを蓄積している訳ではない。その脇の甘さが、被害を拡大している。
損保会社は、今後海外での保険サービスを縮小していくはずである。
ただ本来なら進出国の保険会社を使うのがよいが、補償額や被害にあった時の補償金支払いに問題があるため、大手日系企業は加入しない。
タイの洪水でも、既に日系損保は新規加入を受けていない。しかし、タイの損保会社は洪水のリスクを知っているので、保険料も高く、補償は低い。政府も何の対策もしない。無保険状態が今年は続いている。
しかし、新興国はどこも労働紛争だらけである。インドネシアやインドでは労働争議が多発している。
日系が進出している地域で、集団略奪に合う可能性が低いのは、欧米を除けばベトナムと韓国、タイ、マレーシア程度である。南米はリスクが高い。
やはり政府が他の進出国政府と連携して、新興国政府に対して、進出企業への保険制度の拡充と補償額の増額を交渉させるべきである。日本だけでなく、欧米の企業にもリスクがあるのだから、連携して当たるべきである。
新興国の外国投資法がどこも同じになっていると先日のブログで書いたが、魅力ある投資国と見てもらうには、何かメリットがないと。
暴動や洪水、略奪等は現地政府の対応である程度防ぐ事ができる。この治安向上と人災事故の低減ができれば、新興国も次のステップに移ることができるはずである。
やはり、分からないことは安易に保証しないに限る。