16式機動戦闘車(略称: 16MCV・MCV)は、防衛省が開発した装輪装甲車。
16式機動戦闘車は、開発事業名「機動戦闘車」として2007年(平成19年)度に開発が開始され、2016年(平成28年)度の防衛予算から調達が開始された装輪装甲車であり、積極的に戦闘に参加させる点から「戦闘車」に分類されている。
普通科(歩兵)に対する直接火力支援と軽戦車を含む装甲戦闘車両の撃破などに使用するための車両であり、主に機動師団および機動旅団に新編される即応機動連隊、地域配備師団および地域配備旅団に新編される偵察戦闘大隊に配備される。
即応機動連隊は既存の普通科連隊を母体に機甲科の機動戦闘車部隊と野戦特科の重迫撃砲部隊が一体となった諸職種連合の緊急展開部隊であり、偵察戦闘大隊は従来の偵察隊と戦車部隊を統合した機甲科部隊である。
16式機動戦闘車は戦車ではないが、大口径の戦車砲を砲塔に備える姿から、装輪戦車と呼ばれることもあり、戦車が担っていた任務を一部代替するものである。
特筆すべきは16式機動戦闘車の火力は74式戦車と同等であり、装輪車両の弱点である命中精度の低さを高度な射撃統制機能などの新機軸導入によって克服が目指されている点である。
しかし履帯を有しないため戦場機動力に劣り、重量に制限があるため同世代の主力戦車に準ずる火力や装甲を与えることは困難である。
それゆえ16式機動戦闘車は戦車を完全に代替するものではなく、10式戦車と並行して配備される見通しである。
16式機動戦闘車は戦車を代替するものではないが、予算上の制約により戦車は配備数を縮小廃止していく方向が25大綱や26中期防で示されており、機甲師団や教育部隊など戦車が必要不可欠な部隊は別として、本州や四国といった戦車の重要性が低いとみなされている部隊では戦車の運用を諦めることが想定されている。
そこで16式機動戦闘車が全国へ配備されることによって、この車両が戦車の担っていた歩兵支援を代替する存在と見込まれている。
一方で、機動戦闘車の装輪による機動は、履帯を有する戦車に比べて道路上での速度が高く、機構への負担が少ないという強みがある。
戦車はこの欠点を回避するために戦略移動中は極力自走せず、戦車運搬車で輸送される。
その点、機動戦闘車は自力走行でも問題が起きにくいとみられ、即応性が高く運用の負担が少ない。