軍役に従事する女性を女性兵士と定義するらしい。
その歴史は意外にも古く、何と日本の弥生時代には既にいたらしい。
女性は男性に比べて総じて身体能力で劣る(そうでない場合もあるが・・・)ため後方支援や技術関連などの役職に就くことが多く、歩兵や砲兵といった前線で戦う女性兵士は世界ではかなり稀であるらしい。
例えば米軍では女性は機甲・野戦砲兵など特定の地上戦闘部隊には加われない。
現代においては、短い期間であるが女子も徴兵されるイスラエルやマレーシアのような例も存在するが、この場合実質上の短期教育制度であり軍事教練を行わないので、男子同等の義務が負わされているとは言い難い。
また、女性兵士を前線に出すと負傷するなどして孤立した女性兵士を救おうと男性兵士が冷静さを失って無謀な行動に出てしまい、犠牲者が増えてしまうという問題もある。
過去では捕虜になった際に危険を取り除くことが出来ないと、前線に出ることが許されない国もあった。
ただし、ソ連軍は別。
独ソ戦では戦車兵、狙撃兵、パイロットなどの職務に就き、男性兵士同様の勇猛な活躍を見せたたくましい女性たちの伝説が多々伝えられている(ロシア人には堂々たる体格の女性が多いことにもよる)。
もちろん若い女性たちも数多くいて、これらはソ連の共産主義が良い意味で男女平等を訴えていた事や、悪い意味で従軍がブームになって少女たちが流行に気軽に志願した事なども大きな要因となっている。
しかしソ連においても女性兵士の活用は窮余の策であり、戦後には女性兵士の前線勤務は廃止されている。
また女性兵士の動員を想定していなかったため、様々なトラブルも発生している。
下着などを始めとする備品の不足や、女性だから軽視されたりといった差別、投入された戦線での悲惨で過酷な戦い。
そして戦後に復員した女性兵士たちもその来歴故に差別されたりなど、決して華々しいだけのものではなかった。
これらについては彼女たちソ連女性兵の体験談を纏めたノンフィクション『戦場は女の顔をしていない』に詳しい。
現在、世界で10カ国あまりが女性兵士の「白兵戦任務」への参加を許可している。
イギリス国防省(MOD)が2010年の研究で定義しているところによると、白兵戦任務とは「地上で敵と交戦し(中略)敵の攻撃にさらされ、高確率で敵軍兵士と身体的に接触する」任務のことだ。
女性の戦闘参加を許可している国の中でも、特に女性兵士への制限事項が少ない国々を以下に紹介する。
【 オーストラリア 】
アメリカと並び、女性兵士の前線部隊への参加制限を新たに撤廃する国だ。オーストラリア国防相は2011年、特殊部隊、歩兵隊、砲兵隊など、これまで男性限定だった残り7%の軍務について、身体的要件を満たした女性の配属を認める方針を発表した。
現在、女性兵士はオーストラリア軍全部隊の約10%を占める。
【 カナダ 】
カナダは1989年、潜水艦戦を除くすべての戦闘任務を女性兵士に開放した。
2000年には潜水艦での任務も許可している。
現在、女性の比率はカナダ軍全体で約15%、戦闘部隊(99部隊ある)で2%だ。
2006年には砲兵隊で観測任務についていた女性兵士がタリバンとの戦闘中に死亡し、カナダの女性兵士初の戦死者となった。
【 デンマーク 】
デンマークは1988年から「完全統合」の方針をとっている。
これは1985年に、女性が前線で戦う可能性を探るために行われた「戦闘試験」の結果を受けての措置だ。
「デンマークの調査により、女性は地上の戦闘任務で男性と同等の働きをすることが証明された」とイギリスMODの研究は述べている。
デンマークではすべての任務が女性に開放されているが、身体的要件により、今のところ特殊作戦部隊への女性の参加は実現していない。
【 フランス 】
フランス軍は全体の5分の1近くを女性が占め、潜水艦での任務と暴動鎮圧にあたる憲兵隊を除くすべての軍務につくことができる。
戦闘歩兵隊への配属も許可されているが、大半の女性兵士は配属を希望しなかったため、同部隊に占める女性の割合はわずか1.7%だ。
【 ドイツ 】
ドイツでは2001年に女性兵士の戦闘部隊への配属を許可して以降、女性の入隊者が大幅に増加した。
現在、ドイツ連邦軍の女性兵士の数は2001年の3倍に増えている。戦闘部隊に所属する女性兵士は2009年時点で約800人にのぼる。
【 イスラエル 】
1985年、イスラエル国防軍(IDF)は女性の戦闘任務への配属を開始した。
2009年の時点で、女性兵士は砲兵部隊、救助部隊、対空部隊に所属している。
イスラエルでは女性にも兵役義務が課せられているが、男性の3年間に対し、女性は2年間となっている。
【 ニュージーランド 】
2001年の法案可決により、歩兵部隊、機甲部隊、砲兵部隊など、すべての国防軍部隊に女性兵士が参加することが可能になった。
4年後に出た報告書によると、このことは「女性を男性と同じように尊重する」社会的変化を促進したが、戦闘任務への女性の起用には「意識的で協力的な取り組みを必要とした」という。
イギリスMODは報告書の中で、「これら任務に対する女性の勧誘、徴募は着実な成功を収めているとは言えない」と結論づけている。
【 ノルウェー 】
1985年、ノルウェーは北大西洋条約機構(NATO)加盟国として初めて、潜水艦を含むすべての戦闘任務に女性がつくことを許可した。
国家総動員の事態が起きれば女性も徴兵対象になる。
「ノルウェー軍において歩兵隊や騎兵隊の任務を志願する数少ない女性兵士たちは優れた働きをみせている」と、同軍で25年間にわたって歩兵隊将校を務めるイングリッド・イェルデ(Ingrid Gjerde)大佐は述べている。