東日本大震災 災害派遣活動記録映像 | 戦車兵のブログ

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元陸上自衛隊の戦車乗員である戦車兵のブログ
北海道在住でマニアックなメカとしての戦車じゃなく、戦車乗りとしての目線から自衛隊や戦史、戦車を見る!!。
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災害派遣とは、地震や水害等の自然災害や、死傷者の発生が伴う事故などといった各種災害の発生に際し、自治体や警察・消防などの能力では対応しきれない事態において陸海空の自衛隊部隊を派遣し、救助活動や予防活動などの救援活動を行うことである。

 

自衛隊において、防衛出動や治安出動に並ぶ重要な任務のひとつとされる。「災派(さいは)」と略称されることもある。

 

 

 

災害派遣は災害により当該地域や自治体の保有する防災・災害救助の能力では十分な対応が出来ない時に行なわれるもので、自衛隊法第83条に定められている自衛隊の行動である。

 

自衛隊の主任務は自衛隊法第3条第1項に規定されている「外国の侵略からの国土防衛」であり、災害派遣は同法第3条第2項の主たる任務に支障ない範囲で行われる、本来任務の中の“従たる”任務にあたる。

 

 

災害救助という緊急を要する場面が想定される活動であるため、その場に警察官がいない場合に限り、警察官職務執行法が準用され、私有地への立ち入りや建築物・車両等の除去など私権を合理的な範囲で制限する権限が認められている。

 

 

災害派遣は、その活動内容が専ら人命・財産の保護であり、2016年現在、1度も実施されていない防衛出動や治安出動、3回しか実施されたことがない海上警備行動と異なり、すでに32,000回以上の出動実績がある。

 

 

災害派遣により出動した自衛隊の部隊等が行う活動は非常に幅広い。

 

自衛隊が災害派遣において発揮する最大の特性かつ長所は、他組織の支援を得られなくとも自力で任務遂行を可能とする、軍隊同等の高度な自己完結性にある。

 

 

消防や警察などは初動準備にある程度の時間を要するため、被災から一定時間経過後の物資輸送や生活支援、応急復旧工事などでこそその真価を発揮すると考えられている。

 

 

しかし、自衛隊に対する期待の主要なものはインフラの破壊された被災地に対する、ヘリコプター等による空輸能力を活用した早期展開による人命救助活動であり、基本的には遠隔地から派遣されるため困難が伴うが、航空機や初動要員の24時間待機などの体制が整えられている。

 

 

行方不明者の捜索

 

建物など構造物から自力で脱出できない被災者の救出(出動した時点で特別救助隊等だけでは到底手が足りない状況になっていることが明白な場合。災害現場での捜索救助は消防の専門であり自衛隊の専門ではないため)

 

 

負傷者の治療(診療所や病院、個々の医師達だけでは手に負えない状況)

 

 

遺体の収容・搬送

 

堤防や道路の応急復旧

 

支障物の撤去

 

人員・物資の輸送

 

空中消火

 

 

災害発生時に現地で救助・支援活動を実施する自衛隊員たちという括りで、テレビ報道なども含めて一般大衆がその姿を目にする作業としては、主なものはこれらが挙げられる。

 

とはいえ、自衛隊の活動範囲は決してこれらに限定されるものではなく、むしろ非常に広範囲に及ぶものであり、さらには、

 

入浴用仮設施設の開設

 

 

火山観測

 

災害観測や二次災害防止に必要な各種施設の早期復旧の支援

 

原子力発電所などでの原子力事故の未然防止措置および化学防護・施設封鎖・除染等

 

化学・生物テロなどでの、救助・治療、化学防護、施設封鎖、除染等

 

被災者を対象とした音楽隊による慰問演奏

 

害獣、害虫の捕獲・殺処分またはその支援

 

家畜伝染病に感染した家畜(患畜)に対する必要な処置(殺処分など)の実施

 

 

このように、状況や緊急性に応じて必要とされるあらゆる活動を、可能な限り実施する。

 

 

原則として火器は使用しないが、ほかに手段がなくやむを得ない場合には火器の使用も選択肢として含まれる。

 

 

1974年、火災を起こして東京湾から太平洋に漂流していた第十雄洋丸を処分するため、護衛艦による5インチ砲射撃、対潜哨戒機による127ミリロケット弾、対潜爆弾投下が行われ、最後は潜水艦による魚雷によって沈没させた(第十雄洋丸事件)。

 

 

1991年、雲仙普賢岳の噴火で大規模な火砕流災害が発生した際には、火砕流の夜間警戒に際して、搭載している(アクティブ)投光器の大出力・大光量の性能を買われて74式戦車の派遣が検討され、駐屯地で待機していたが実際に使われることはなかった。

 

 

また、戦車の高い放射線防護能力を買われ、2011年に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故では、放射線に汚染された瓦礫の撤去、通路啓開を目的に排土板(ストレートドーザ)を装備した74式戦車2両が派遣されJヴィレッジで待機していたが後に遠隔操作式の重機が投入されたため使われることはなかった。

 

 

想定ではあるが、ゴジラなどの怪獣が日本に襲来した場合、撃退するには防衛出動ではなく有害鳥獣駆除目的で災害派遣され、同時に火器使用が可能とする旧防衛庁の机上研究が存在し、元防衛相の石破茂もこの考えを支持している。

 

政府の公式見解ではなく机上研究であるため、2016年製作のシン・ゴジラでは防衛省が製作に協力しているが、防衛出動を根拠とした出動との設定が採用された。

 

 

 

通常の災害派遣(自衛隊法第83条2項本文)
 
災害発生により発生した被害については、まず自治体(消防・警察などを含む)や海上保安庁が対応することとなるが、十分な対応が困難な場合、(市町村の要求をうけた)都道府県知事、海上保安庁長官や管区海上保安本部長、空港事務所長からの要請に基づいて自衛隊の部隊等が派遣される。災害派遣の場合の行動命令の略号は「行災命」。
 
 
特に大規模な震災で多人数の派遣が必要とみなされた(防衛大臣による大規模震災の指定)場合には、防衛大臣より「大規模震災災害派遣命令」が発される。
 
東日本大震災に際しては、3月11日18時に発令されている

 

自主派遣(自衛隊法第83条2項但し書き)
 
 
緊急に人命救助が必要な場合で都道府県知事等と連絡が取れない場合(通信の途絶や現地の混乱など)や災害発生時に関係機関への情報提供を行う場合など一定の要件を満たす場合は要請がなくても部隊が派遣されることがあり、このような場合は「自主派遣」と呼ばれる。
 
自主派遣された場合でも、後日に都道府県知事等からの正式な要請文書を受け取る場合が多く、完全に「自主派遣」とされることはまれである。
 
近年のテロ警戒活動において、警戒地域内または周辺で災害派遣の垂れ幕を付けた自衛隊車両が多数待機している場合がある。
 
テロ攻撃という事態に対し迅速な政治判断ができない場合に備えて自主派遣でもって出動するためである。
 
現在では被害状況の把握としてファスト・フォースが派遣要請前に情報を収集する際の根拠ともなっている。
 
例として2016年10月の鳥取県中部地震では災害派遣の要請が出される前に航空機が先行して被災地を調査している。
 
また2010年横浜でのAPEC首脳会議ではテロ警戒として自主派遣の措置が取られとされるが、要請があった事実は確認されていない。

 

 

近傍派遣(自衛隊法第83条3項)
 
部隊や自衛隊の施設の近傍で災害が発生している場合に部隊等の長が部隊を派遣することがあり「近傍派遣」とよばれる。
 
この活動は近所づきあいの範囲とされ都道府県知事等の要請は必要としない。
 
 
地震防災派遣(自衛隊法第83条の2)
 
地震災害に関する警戒宣言が出された際に地震災害警戒本部長の要請により部隊等が派遣されるもので、1978年(昭和53年)の大規模地震対策特別措置法の制定に関連して追加された。
 
この条文での派遣実績はない。
 
地震防災派遣の場合の行動命令の略号は「行震命」。

 

阪神・淡路大震災までの一時期、文民統制の原則から、都道府県知事等の要請がなければ絶対に災害派遣行動はできないという考え方が主流となっており(幹部自衛官による独断専行を容認することはクーデターに繋がるとする意見がある)、緊急を要する場合は訓練名目での派遣や近傍派遣の名目で行なわれたこともあったが、阪神・淡路大震災での反省を踏まえ、現在では「自主派遣」に関する基準が明確化されており、法制定の趣旨に沿った活動が行われている。

 

 

そもそも、災害派遣は災害という非常事態下のやむを得ない場合に行なわれるもので、「緊急性」「公共性」「非代替性」を総合的に判断して派遣の可否が判断される。

 

 

平成18年豪雪に伴う災害派遣のように関係者の間で自衛隊災害派遣の是非を巡る判断が分かれる場合、政府首脳による政治的判断により災害派遣の実施が決定されることもある。