米国海兵隊の精強さは、世界中に轟いている。
かつて大東亜戦争で初めて日本軍が緒戦で敗れ、米軍の反攻となったガダルカナル島の戦闘で米海兵隊の指揮官が、自分の部下に対して「お前達になくてジャップにあるのはガッツだ」と言わしめた戦いがあった。
旭川の歩兵28聯隊を基幹とする一木支隊が全滅、その後逐次投入された日本軍の中に仙台歩兵第4聯隊第2大隊長田村昌雄少佐率いる大隊が飛行場の真ん中に居座り戦闘を続け米海兵隊を驚嘆させた。
戦後、インパール戦に従軍し、終戦後に捕虜収容所に居た田村少佐を捜し出した米海兵隊は、海兵隊へ招聘し日本陸軍の精神を海兵隊員に叩き込んだという。
海兵隊の精強なDNAには日本陸軍の精神が混じっているのだ。
アメリカ海兵隊は、伝統的に志願制を採り、少数精鋭を目指している海兵隊では、入隊志願者は採用時に選別されるため、入隊する人数はそれほど多くない。
志願者は海兵隊ブートキャンプという志願者訓練所(カリフォルニア州サンディエゴ訓練所と、サウスカロライナ州パリス・アイランド訓練所の2か所が存在)に入所して訓練を受ける。
訓練所内では男女は同様の訓練を受けるが、訓練そのものは別々で行われる。
海兵隊の入隊教育期間は13週間におよび、4軍の中でも最も長く、苛烈な練兵を行う。
練兵では入営者の個性を徹底的に否定し、団体の一員として活動させ、命令に対する即座の服従を叩き込まれる。
ついて来られない者は容赦なく民間社会に投げ戻され、練兵訓練を修了した者のみが「海兵」と名乗ることを許される。
海兵隊除隊後に他の軍に入隊しても再度練兵訓練を受ける必要は無いが、他軍を除隊して海兵隊に入隊した者は、それまでの功績を問わず海兵隊の練兵訓練を受けなければならない。
厳しい体力錬成や戦闘訓練などの試練に3ヶ月余り耐えた者は、訓練期間終了と同時に1等兵または2等兵として任用され、海兵隊隊員となる。
志願採用時に各人の経歴に応じてブートキャンプ後に1等兵か2等兵になるかがあらかじめ契約されており、訓練所内での成績、席次は関係ない。
ブートキャンプを修了した新人海兵は、歩兵は歩兵学校(School of Infantry)、他の兵科では戦闘訓練課程(Marine Combat Training)および兵科別学校において継続訓練を受けた後に、各部隊に配属される。
海兵隊は陸軍のウエストポイントや海軍のアナポリス、空軍のコロラドスプリングスといった独自の士官学校を持たず、入隊する士官は大学卒業が最低条件で全米の大学からの卒業生や多様な職業の者が入隊を希望して来る。
これらの士官希望者は、まず海兵隊の士官候補生学校 (Officer Candidate School、OCS) に入校し、10週間の訓練を受けて修了することが求められる。
アナポリス卒の士官候補生が海兵隊将校に任官する道もある。
各大学に設けられている予備役将校訓練課程を修了すれば海兵隊少尉に任官される。
教育は前半2年間は海軍関係を、後半2年間は海兵隊について学ぶ。
無事にOCSを修了すると海兵少尉 (2nd Lieutenant) に任官され、すぐに続けてバージニア州クアンティコの米海兵隊基礎訓練校 (TBS、The Basic School) に入校し、6ヶ月間の訓練と教育を受ける。
期間中に TBS での成績が規定レベルに達しない者は海兵少尉の任官が取り消される。
TBS の卒業によって真の米海兵隊士官となる。
軍人として在役中の成績が概ね良好で、軍法会議または民事訴訟などの対象にならずに一定の条件を満たして除隊した者は、名誉除隊となり、名誉除隊証書が交付される。
名誉除隊証書の交付を受けると、福利厚生・生活保障の面においてさまざまな恩典を受けることができる。
海兵隊において名誉除隊となる勤務成績以外の主な条件は、次のようなもの。
20年以上の勤続(大尉で定年を迎える・佐官に昇進している。)
傷痍除隊(戦傷によって職務への復帰が不可能と判断された場合がこれに当たる。勤続年数を問わない。)
名誉ある職業への転職(勤続年数を問わない。)
- 普通除隊
- 軍人として在役中の成績が概ね良好で、軍法会議または民事訴訟などの対象にならなかったが、名誉除隊の条件を満たせずに除隊した者は普通除隊になる。
- 例としては以下の通り。
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- 二度昇進を見送られた者
- 尉官(中尉・少尉)のまま勤続20年目を迎え、佐官に昇進出来なかった者
- 勤続19年目以前に昇進見送りとなった者
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- 不品行除隊
- 軍法会議による有罪判決の確定、犯罪で逮捕されるなど、軍人として不名誉な行為に対する懲戒処分の一種で、強制的に除隊させられる。
- 不名誉除隊となった場合、軍人年金や退職金の不支給をはじめとして事実上退役軍人としてのあらゆる権利を剥奪される他、不名誉除隊後は、次のような不利益を被ることがある。
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- 医療保険の停止
- 市民権の停止
- 再就職の際においては、履歴書に不名誉除隊の旨の記載を義務付けられる。
- 銃器所持の制限(銃規制で非海兵隊員の民間人と同等になる)
Once a Marine, Always a Marine.なので、除隊後も「元海兵隊員」ではなく「海兵隊員」と呼ばれ続けるが、もし不名誉除隊となった場合は「海兵隊員」はおろか「元海兵隊員」と名乗ることすら禁止される。
不名誉除隊と聞いて真っ先に思い出す映画がある『ア・フュー・グッドメン』だ。
映画『ア・フュー・グッドメン』は、トム・クルーズ、ジャック・ニコルソン、デミ・ムーアが共演する軍事法廷サスペンスだが、海兵隊内の事件が舞台となっている。
キューバにあるグアンタナモ米海軍基地で海兵隊員ウィリアム・T・サンティアゴ一等兵が殺害された。
被疑者は同じ部隊のハロルド・W・ドーソン上等兵とローデン・ダウニー一等兵。
彼らの弁護人に任命されたダニエル・キャフィ(トム・クルーズ)中尉はハーバード出身だが法廷経験がない。被告2人は軍隊内の落ちこぼれに対する通称コードR(CODE RED規律を乱す者への暴力的制裁)の遂行を命じられていた。
上官の命令に従って行ったことが・・・・どこの軍隊でもあり得る話だ。
被告のハロルド・W・ドーソン上等兵は誇り高き海兵隊員、判決は不名誉除隊。
上官の命令に従って行ったことでも・・・、どんなにくだらない命令でも命令として実施する兵隊にとって抗命は有り得ない話だ。







