映画『フルメタル・ジャケット』 | 戦車兵のブログ

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フルメタル・ジャケット』は、1987年のアメリカ映画で、ベトナム戦争を題材にした戦争映画。

 

監督はスタンリー・キューブリック。

 

 

 

原作は、グスタフ・ハスフォードの小説『ショート・タイマーズ』(用語の意義としては「短期現役兵」)。

 

邦訳は『完全被甲弾』となり、弾体の鉛を銅などで覆った弾丸のことである。

 

日本での公開は1988年3月。

 

この映画が公開されていた頃はベトナム戦争物の映画がたくさん作られていた。

 

「プラトーン」「ハンバーガーヒル」など・・・・。

 

 

明確に二部に分かれた構成。前半では海兵隊訓練所で新兵が受ける過酷な訓練、後半では彼らのベトナムでの行動が描かれる。

 

この映画はなんといっても海兵隊の新兵教育の描き方が秀逸であった。

 

ベトナム戦争時、アメリカ海兵隊に志願した青年たちは、サウスカロライナ州パリス・アイランドの海兵隊訓練キャンプで厳しい教練を受ける。

 

 

キャンプの鬼教官・ハートマン先任軍曹の指導のもとで行われる訓練は、徹底的な叱責と罵倒、殴る蹴るの体罰が加えられ続けるという、心身ともに過酷を極めるものだった。

 

 

ハートマン先任軍曹を演じたロナルド・リー・アーメイは、ニックネームは「ガニー(Gunny)」(Gunnery Sergeant:一等軍曹の略称)海兵隊時代には教練指導官も務めた本物の海兵隊員であった。

 

過酷な新兵訓練の場面を演じたアーメイだが、軍人上がりの父親による軍隊式の躾の方が現実の軍隊での訓練より厳しかったため、訓練課程は苦にならなかったという。

 

1965年から1967年までの2年間、カリフォルニア州サンディエゴの海兵隊サンディエゴ新兵訓練所 (MCRD San Diego) で、DI(ドリル・インストラクター、教練指導官)として勤務。

 

 

1968年、第17海兵航空支援群の一員としてヴェトナムで戦う。

 

沖縄でも2度ほど勤務する。

 

この間何度も負傷し、1972年に二等軍曹(Staff Sergeant)で名誉除隊。

 

しかし、負傷は戦闘によるものではないという事でパープルハート章は授与されなかった。

 

 

退役後もPTSD(心的外傷後ストレス障害)とみられる戦闘経験の悪夢と闘っていた。

 

 

2002年5月、海兵隊司令官ジェームズ・ローガン・ジョーンズ大将によって、一等軍曹(E-7)へと名誉昇進した。

 

米海兵隊の歴史上、退役者が昇進したのは彼が初めてである。

 

これによってニックネームの「ガニー」が事実となった。

 

2018年4月15日、肺炎による合併症のため死去。

 

享年74歳。

 

 

リアルな新兵教育シーンは、連帯責任による懲罰、訓練生の間で行われるいじめなど閉鎖的な空間で受ける社会的ストレスが次々と描かれていく。

 

 

落ちこぼれだった訓練生レナードは、ジョーカーら同期生のサポートを受けて訓練をやり遂げ、最終的に射撃の才を認められ高い評価を得るが、過酷な訓練により精神に変調をきたしてしまい、卒業式の夜にハートマンを射殺した後自ら命を絶つ。

 

 

レンジャーコールのこの動画のシーンは有名だ。

 

走り方もリアルな新兵そのもので役者の演技という感じがしない。

 

『フルメタル・ジャケット』の新兵教育シーンは他の映画では見られないリアル感が感情移入させ臨場感を与えている。

 

 

厳しい新兵訓練を耐え抜き一人前の海兵隊員となった彼らは、ベトナムへ送られる。

 

 

テト攻勢の第一撃を受けた後、前線での取材を命じられた報道部員のジョーカーは、訓練所での同期であったカウボーイと再会し、彼が属する小隊に同行することとなる。

 

 

ある日カウボーイたちは、情報部から敵の後退を知らされ、その確認のためにフエ市街に先遣される。しかし交戦地帯で小隊長が砲撃で戦死、さらに分隊長をブービートラップで失う。

 

 

残る下士官のカウボーイが部隊を引き継ぐも、進路を誤って転進しようとしたところに狙撃兵の待ち伏せを受け、2人の犠牲者を出す。

 

 

無線で前線本部の指示を仰ごうとしたカウボーイは、廃ビルの陰に隠れたつもりが、崩れた壁の隙間から襲ってきた銃弾に倒されてしまう。

 

 

残されたジョーカーらは狙撃兵への復讐を決意し、煙幕を焚いたうえで狙撃兵がいるとみられるビルに忍び込む。

 

ジョーカーが見た狙撃兵の正体は、まだ若い少女だった。

 

 

ジョーカーは狙撃兵から返り討ちにされそうになるが、駆け付けたラフターマンが彼女に銃弾を浴びせた。

 

虫の息となった狙撃兵の少女は祈りながらとどめを刺すよう懇願し、ジョーカーは様々な思いの中で拳銃の引き金を引いた。

 

 

運よく五体満足で任期を終えられる期待に喜びを感じながら、ジョーカーらは高らかに歌いつつ、闇夜の戦場を行軍してゆく。

 

 

 

前半の新兵教育からガラリと変わり、後半はベトナムの戦場になる。

 

 

しかも、ベトナム戦争の定番のジャングルの戦闘シーンではなく、市街戦。

 

戦車まで出てくる。

 

戦車後部の「車外電話機」で歩兵と戦車兵との連携はなかなか面白いシーンであった。

 

自衛隊でも普通科隊員に車外電話機の使い方を教えたことがあったが、実際の訓練で使っているのを見たことはなかった。

 

今の自衛隊戦車から車外電話機そのものが消えた。