【黒田勝弘のから(韓)くに便り】では韓国をよく知る黒田勝弘氏の視点で韓国の現状を紹介している。
長崎県対馬市の寺から韓国人が盗んでいった仏像について韓国の地方裁判所が、日本に返さなくてもいいという判決を出した。
その際、寺の元住職がテレビで「隣には異次元の世界があるようだ」と感想を語っていた。なるほど、韓国を「異次元」とは言い得て妙である。
隣でもう一方の北朝鮮は、自ら鎖国を選択し、きわめて特異な「国のかたち」を作り上げているので文字通り異次元の世界だが近年、日本人には韓国もそう見えるようだ。
違和感のある出来事が多いからだろう。
われわれ韓国ウオッチャーたちにとっては昔から、韓国と日本の同質性と異質性が関心の対象だ。
地理的に近いし文化的、歴史的にも関係が深い。
遺伝子というか人種的にもきわめて似ている。
古代には日本が多くの影響を受け、近代以降は日本が大きな影響を与えた。
しかし片や島国で片や大陸にぶらさがる半島国家だから、風土や文化、歴史的経験はかなり異なる。
そんなこんなで、お互い似ているようで似ていない、違うようで似ているといった微妙な感じがある。
このことを筆者は以前から「異同感」といい、この「異同感」の面白さ、興味深さが韓国ウオッチャーの妙味であると語ってきた。
ところが近年、日本人に違和感を与えているのは、そうした日本との「異同感」からくる違いではなく、もっと普遍的で一般的な「法秩序が守られていない」とか「国際的マナーがない」といった点での異質感だ。
韓国が「反日無罪」とか「国民情緒法」などの言葉で語られるのは、日本大使館・総領事館前の慰安婦像をはじめ、日本相手なら何をやっても許されるという話だが、これも日本との異質性というより、国際的にはありえないというもっと根本的な異質性である。
最近の朴槿恵(パク・クネ)大統領退陣要求のいわゆる「100万人ロウソク・デモ」もそうだ。
警備当局の数字よりもっぱら主催者発表の誇大な数字がメディアで定着する異様さもさることながら、議会は野党が多数を占め、メディアの政府批判は限りなく活発という民主主義の現状には満足せず、大群衆による街頭圧力で政府を屈服させるのが民主主義といって自画自賛している。
それにあのセウォル号沈没事故だって、責任者の裁判や補償も終わっているのに、いまだ「真相究明」などといって反政府運動のネタになっている。
慰安婦合意への否定や攻撃もそうだ。韓国では近年、メディアや市民団体など非政府組織(NGO)の力が強く国の権威が著しく後退しているのだ。
だから政府は国際的な基準やマナーを国内で押し通せない。
NGOやメディアの反発を恐れ腰が引けるのだ。隣は今や「国のかたち」が壊れ、いささかオーバーにいえばどこか無政府状態である。だから付き合い方が難しい。
これはいつ立ち直るのだろうか。
ところで日本人にとっては反日イメージが強い韓国から、昨年は500万人以上もの日本訪問客があった。
毎年、急増している。こうした日本訪問客に国際的マナーを持ち帰ってもらって、本国の状況を変えてもらうしかない? (ソウル駐在客員論説委員・黒田勝弘)
(産経ニュース)