短艇(カッター) 海自の誇りを支える人力舟 容赦なき「総短艇用意」に海自幹部は震え上がる | 戦車兵のブログ

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旧日本海軍出身の方に軍隊時代の話を聞くと決まってカッターの話が出たものだ。
以下産経ニュースより転載



 全長約9メートル、総重量1.5トン。旧海軍時代は戦艦などに積み込まれ、他の艦艇への物資の運搬などで乗員が洋上で艦艇を離れる際に使われた。

ときには沈没寸前の艦艇から退避するための舟にもなった。


時は経ち、現在の海上自衛隊艦艇にはエンジンで動く内火艇や作業艇が搭載されている。人力でオールを漕ぐ短艇(カッター)が、もはや“過去の舟”であることは否めない。

 しかし、一線を退いたわけではない。


しかも、数々の荒波を乗りこえてきた海自幹部の誰もがもっとも恐れる舟として“活躍”しているのだ。

 防衛大学校や一般大学の卒業生らが初級幹部自衛官として必要な基礎的知識と技能をたたき込まれる幹部候補生学校(広島県・江田島)では、「総短艇」と呼ばれる訓練が行われる。


 海難事故時に乗員が脱出する「総員離艦」を想定し、生徒たちは指令が下されると、岸壁につり下げられた短艇を海面に降ろし、決められたコースへ漕ぎ出ていく。


指令が下るのはいつも抜き打ちだ。


昼ご飯を食べているときでも、休憩時間でも、生徒たちはすべての作業を止めなければならない。昨年度は計30回行われたという。

 「学生隊待て! 総短艇用意!」


 幹部候補生学校にアナウンスが鳴り響くと、総勢約150人の生徒が猛烈な勢いで岸壁を目指して走っていく。


生徒は6分隊に振り分けられ、日常生活を送っている。


短艇に乗り込むのも分隊単位で行われ、毎回順位が決められる。


年間最優秀隊は表彰されるから、多少遅れても必死の形相で追いつこうとする。

 同じボートでも、椅子がスライドしてオールに力を伝えられるレガッタとは異なり、カッターでは下半身に加わる摩擦も強くなる。


ある男性海自幹部は「お尻の皮がむけるので、女性用生理ナプキンを着けるんですよ。


最初に買いに行ったときは、何を買えばいいか分からないし、恥ずかしいしで…」と振り返る。

 総短艇は速ければいいわけではない。


服装、ルールが厳しく定められ、少しでも違反すればタイムに加算される。


他の短艇の邪魔をすれば即失格。他の分隊に違反があれば、教官に申し立てを行う。


国際海洋法を正しく理解し、事故があれば的確に状況を説明する能力を鍛えるためだ。

 カッターが実戦の場で活躍することはない。


それでも幹部候補生学校は総短艇にこだわる。


池太郎校長はチームワークや責任感を培うことに加え、「多くの海上自衛官は船の上で何カ月も生活を送る。


そうなれば当然ストレスもたまる。これに耐えられるように、徹底的にストレスをかける」として、生徒たちにストレスを与える目的もあると説明する。

「短艇を見ると、本当に嫌な気持ちになる。あんなものを二度と見たくない」

 海自幹部たちは口をそろえてこう言う。


とはいえ、その口ぶりは懐かしそうでもあり、うれしそうでもある。


海自幹部としての誇りと連帯感を支えているのは、小さな舟の記憶なのかもしれない。

(政治部 杉本康士)


(産経ニュース)


時代は変わってもカッター訓練は船乗りの基本なんだろうね。


だから海上自衛官になる人はこういう訓練を通じて共有できるものがあるのだと思う。


旧海軍軍人でも外国の海軍軍人でもきっと短艇訓練というので親近感が出来るものなのかもね。