「納得できない「談合」自衛官の起訴、 純国産ヘリの開発こそ国益にかなう」
桜林美佐さんの記事はいつも勉強になります。
顔を火傷されたとか・・・、傷にならないといいですね。
以下JBPRESSから転載
近頃また「国防について考える」事案が次々に起きている。北朝鮮による事実上のミサイル発射、中国船による連日の領海侵入、さらにエスカレートして中国機による領空侵犯まで許してしまった。
防衛問題に取り組んでいる者としては、こう毎日のように頭を悩ましているとノイローゼになってしまうのではないかと我ながら心配になるほどだが、中でも全く納得ができず、何度考えても腑に落ちないのは以前も取り上げた陸上自衛隊の「UH-X」の一件である。
官製談合防止法違反で2人の自衛官を略式起訴
東京地検特捜部は12月20日、防衛省技術研究本部(技本)に所属していた陸上自衛隊の2佐2人を官製談合防止法違反で略式起訴し、100万円以下の罰金の略式命令も下される見通しだという。
起訴の内容は、2人が陸自の次期多用途ヘリコプターUH-Xを川崎重工に受注させるため、仕様書案や競争相手の富士重工の内部資料を同社に伝えたというもの。12月21日付の新聞各紙は一斉にこれを報じ、解説を加えている紙面もあるが、多くは国防と無関係の視点で捉えているようだった。
これは考えてみれば、メディアとしては1つの「官製談合事案」として扱うのは当然なのだが、そうした視点だけで受け手側に捉えられてしまうことは、この国にとって決してプラスになるとは思えないのが正直な思いだ。
この日、唯一、産経新聞では「調達見直し検討 国防に影響も」として、防衛省が今回の事案でUH-X調達の白紙化を検討していることを受け、同機が尖閣有事など島嶼防衛の要として期待されていたことから今後の防衛態勢を案じている。
すでにUH-Xの開発は3年続けて予算計上を見送られてきた経緯があり、昨今のわが国をとりまく情勢に鑑みて、待ったなしのところまで来ている。これ以上の遅れは許されないのである。
国内開発・生産は国益にかなっている
それにしても、この問題の最大の矛盾を感じるのは、その危機感を誰よりも強く感じていたのは他でもない起訴された陸自の2人であり、だからこそ、川崎重工に情報を提供した。それなのに罪に問われたという事実だ。
世の中の多くの人は「官製談合」と言うと、金銭のやり取りや接待など後ろ暗いことがたくさん出てくるものだと思っているのだろう。また東京地検特捜部もそのようなイメージを持っていたのではないだろうか。
しかし、いくら調べてもそのような事実はなく、叩いても結果的には「純国産ヘリを作ってもらいたい」という動機しか出てこなかった(富士重工が製造するヘリコプターは米国企業の技術を取り入れている)。
この動機に対して、「国産は高く、税金の無駄遣い」という「罪」があると批判する論もあるようだが、それについては、かねて申し上げているように外国にプライムメーカーがあると、修理に出せば数カ月や下手すると2~3年も戻ってこなかったり、あるいは製造がストップされて部品が手に入らなくなったり不良品が送られてくるなど、弊害が少なくないのだ。だいたいそういう問題は、購入時には気付かない。
自衛隊のように20年単位で使用するユーザーの、将来的にかかるであろうコストを加味すれば、やはり国内開発・生産がベストなのだ。そういう意味で、国産で最も優れた装備を作ることを追求するのは、「やってみたい」という腕試し的な願望を満たしたいわけではなく、国益にかなった論理だと言える。
競争入札は装備品のスペックダウンを招くおそれがある
少しさかのぼり、12月15日の日経新聞の記事を見ると、2人は選定方式について随意契約を提案していたが、防衛省内の反対で不採用になったとある。
随意契約に対しても、「透明性に欠く」などという見解が多いようだが、そもそも開発・製造できる企業は限られており、競争入札は熾烈な価格競争を招き国民の安全を守る装備品のスペックダウンを余儀なくされる面がある。
それを分かった上でも競争をさせた方がいいと本当に世の人々は思うだろうか。私は、そのあたりのリスク、つまり防衛モノに競争入札を当てはめる危険性が、きちんと国民に知らされていないと思っている。
とにかく「随意契約」は良くないことだと決めつけている。むしろ、富士重工側への配慮が許されれば、トラブルは生じなかったのではないだろうか。これは、今の日本の不思議な常識感覚が招いた悪夢のような出来事だ。
この結末の傍らで、新しい政権の組閣作業は着々と進められている。自民党は、選挙中「日本を取り戻す」と寒空の中で叫び衆院選挙で圧勝した。民主主義においてその命題が日本人の思いに繋がったということだ。
自民党政権には、今の日本の形式的で欺瞞に満ちた判断基準を軌道修正し、少なくとも「国のために」と思って奮闘する人が損をするようなことのない社会にしてほしいと伏して願いたい。
防衛省の元幹部が2人を擁護して発した言葉
もうすぐ仕事納めである。自衛隊員も束の間、家族との団欒を楽しむ季節だ。しかし、起訴された当事者たちはどうだろうか。防衛省は2人を地検に告発していて、これから先どうなるかも見えず関連企業への再就職も難しいだろう。
私は2人と面識もないが、この結果を受け家族とともにどんな年越しをするのか。その苦悩を想像すると、とても「おめでとう」と新年を祝う気持ちにはなれない。
そういえば、12月21日の東京新聞には防衛省の元幹部が2人を擁護したとする発言が載っていた。
「川重のヘリなら同僚の命を預けられると純粋に考えていたのではないか」
常に厳しい視点を持つ同紙であるが、このコメントが掲載されたことに初めて武士の情けを感じた。日本人はかくありたい。
【訂正】記事初出時にタイトルに「逮捕」という言葉を使っていましたが「起訴」に修正しました。
(JBPRESS)
防衛産業の分野をよく知っている桜林さんの記事は、勉強になります。
防衛省は自衛官を軽く見ているのか、自衛官決して守らない。
その反面防衛省職員の汚職は隠蔽するんだよね、かつて守屋事務次官って悪党がいたからね。
なんとか、助けてあげて欲しいね。