母は気付かない | 母の“婚外恋愛”

母は気付かない

ある日家のゴミ箱の中に、プリペイド式携帯電話のプリペイドカードが2、3枚捨てられているのを見つけたので、

深く考えず母に


「携帯買ったの?」


と訊いてみると、母は驚いた顔で私の腕を掴んで子供部屋まで引っ張っていきました。


「どうして?」という母の問いに


「ゴミ箱にプリペイドカードが捨ててあったから…」と答えると


「仕事で必要なんだけどパパに見つかったらうるさいから。パパにも○○(←妹)にも言わないでね。お願いだから約束してくれる?」


と必死に頼まれ、私の中には複雑な想いが巡りました。

この時初めて、ぼんやりと母の後ろに男の影が見え始めたのです。

そしてそれに確信を持つまでそう時間は掛かりませんでした。

次の変化は下着です。

それまでは色もデザインも地味な下着しか着けなかった母が、

青やピンクや黄色。しかもヒラヒラで花が散っているような下着を大量に買い、

夜出掛ける時には必ずそれを着けていくのです。

これは子供心にショックです。

まだ小学生とはいえ、これが何を意味しているのかは母の行動と様子で薄々分かりました。

これで分かったというか、勘のようなものも働いたのです。


母は父以外の男に抱かれている。

自分の知らない場所で知らない男とセックスをしている。


私は吐きそうになりました。

自分を産み育ててきたたった一人の母に裏切られた事実。

それまでの我慢は何の意味も無く、こうして新しいを傷をただ受け続けるしかないということ。

そしてその傷は全て信じていた母によってつけられていたということ。


不倫をしていてもいなくても大人は分からなくなることが多いのかもしれませんが、

まだ狭い世界しか知らない子供にとって家庭とは本当に大きな存在だと思います。

少なくとも私と妹はそうでした。

たとえ家が嫌になっても、逃げる場所はありません。

学校から帰れば、家庭で突きつけられる目を背けたいようなことは全て受け止めなければならないのです。

子供は親が思う以上に分かっています。気付いています。知っています。

しかし私は母のしていることに知らない振りをし続けました。

そして母は、私が気付いていることも知らず不倫を続けました。