挑戦・男たちの詩(88) 

水治療に挑んだ男たち(1)
 

前々回「誤解だらけの浄水器選び’98」という本を紹介しました。この本の中にアルカリイオン水に関する記述があって、著者は、この水を使用している医師のことも書いています。そこで改めて水治療について纏めてみました。
題して「水治療に挑んだ男たち」。NHKの特番みたいなタイトル。笑わないでください。

埼玉県の開業医、鳩山ニュータウン診療所長の篠原秀隆医師。

最初にお断りしておきます。篠原医師は1934年(昭和7年)生まれだそうですから今年75歳。はたして現役であられるかどうかは不明。インターネットで調べたら2006年3月31日をもって鳩山ニュータウン診療所は閉鎖になったというブログを見つけました。
従って、現在は鳩山ニュータウン診療所は存在しないということになります。

璋子の日記 
Beside you

水(あるいは、酸性イオン水)を難病治療で使用し、
他病院で見捨てられた多くの患者を救ってこられた篠原秀隆という医師。

この医師(せんせい)のおられる鳩山ニュータウン診療所を
ネットで検索したところ、診療所はこの3月31日をもって閉鎖となっていることが分かった。公立の診療所だったので、開設者の首長名で告知されていた。

篠原先生という名医は、本で知った。
現代の赤ひげ先生とも言える医師・・・

現代の医療や医療行政に警鐘を鳴らされつつ、
患者サイドに立っての医療を実践される中で、「水治療」というものを研究され施術してこられた名医とか。こうした名医の方が、医師不足という理由で閉鎖せざるを得なくなった診療所におられたとは、驚きを隠せない。

世の中の不条理を感じさせる悲しい情報ですが、めげずに篠原秀隆医師について書くことにいたします。
まず、略歴から・・・
篠原医師は1934(昭和7)年、満州奉天生まれ。医学博士、歯学博士。終戦後日本に引き揚げ鹿児島で高校を卒業し、警視庁警察官になるが、医学の夢捨てがたく、東北大学医学部に入学。卒業後東京警察病院勤務医となる。

篠原医師が「水」との縁ができたきっかけは東京警察病院勤務医であったことだと私は思います。
実はアルカリイオン水の最初のブームは昭和30年代に起きています。

昭和34年1月13日・朝日新聞
「警視庁のオエラ方の間で妙な飲み水摂生法がはやっている。普通の水道水をわずかに電気分解されたものを3~4リットル飲む。都衛生試験所の検査だと、普通の水よりアルカリイオンがいくらか多いが薬用作用は不明だという。
科学捜査研究所の山田所長はじめ本田鑑識課長、秦野捜査課長、渋谷調査課長、浅沼通信総務課長といった怖い人たちが、電解器を事務所において、来客にまですすめている。この”微アルカリ化水”、警職法改正騒動以来の肩のコリをほぐすかどうか」

 

昭和34年5月27日・西日本新聞
「九州管区警察本部はこのところ“水”ブーム。水といってもただの水ではなく、電気分解でつくった水。村井局長、高木公安部長をはじめ幹部連がこの”水”の愛好者。(中略)これを飲むと体内の酸性を中和、体の細胞を新たにするとかしないとかで成人以上の人には霊験あらたかなものがあるというので信者は増える一方。和田部長は「警視庁、警視庁でも今この水の信者は増え、横綱栃錦もこの水を飲んでジンマシンを治したからあれだけの活躍ができたのだ。慈善事業と思ってすすめている」と怪気炎」

篠原医師は東京警察病院勤務という縁で警視庁の”水”ブームに関心を持ち、自分なりに研究し”水治療”に確信をもったものと思われます。

篠原医師の手記から・・(1997年「検証アルカリイオン水」メタモル出版より)

「昭和55年、「もし考え方が間違っていたら、3ケ月で潰れるから覚悟しておけ!」という、院長の暗黙の了解を取り付けた私は、暗中模索ながらも念願の「水治療」をスタートした。そして、現在(1997年)、診療所の待合室は患者さんで溢れている。北海道から沖縄まで、全国津々浦々から来院される患者さんは「口伝え」や「マスコミ」で知った方が多く、診療時間内(夜間なので午後5時~9時)では対応できなくてお断りせざるを得ないのだが、「待っているからどうしても・・・」と懇願されると断りきれない。
大変激務の毎日である。ただ非常に残念であるのは、水治療は経験医学の域を脱し切れていない。これは、私にとって「ジレンマ」である。だが、私には「患者を健康に導く使命」がある。だから「ジレンマ」に陥ってはいられない。そのために「帰納法で医者の大原理(患者を健康に導く)に結びつけばいい」「演繹的に生命の大原理(水は生命の根源)に結びつけばいい」と確固たる信念を持つことにしている。
(中略)水治療が経験医学から脱しきれないのは、まさに人材並びに財源が不足しているからである。

私が水治療を始めたころ「病気を治すには水が大切です」というだけで、精神状態が正常か否か疑われていたが、現在ではだんだん水の大切さをわかってもらえるようになった。
アルカリイオン水が良いと言えば、牛乳に比べると取るに足りないという。はたまたアルカリイオン水を飲みすぎると胃に孔があくという学者まで出てくる。どの程度を飲みすぎというのかわからないが、ちなみに体重75キロの私は、一日10リットルくらい飲んでいる。さらに胃腸の調子はよく、悪いことはない。ましてや孔が開いたことなどない。
一日10リットルの水を飲むという事は、理由なく飲めることではない。便・尿・汗・呼吸などで水の出を充分確保するからこそなせる業である。「孔が開く」といった先生は、それ以上飲んだ場合を仮定したのであろうが、孔が開くほど水を飲むには、故意に「孔を開けよう」として飲む他に方法がない。そこまで思いつめるなら、なにもアルカリイオン水でなく、ウオッカのガブ飲みをお薦めする。とても楽に孔が開く。

「アルカリ性の高い水では胃酸が薄まり消化が悪くなる。ひいては血液が薄まったり胃に孔が開く」など大学教授の肩書を持つ、立派だと思われる学者が堂々と発表するからこまったものだ。・・・・「水を飲めば胃酸や血液が薄まる」との論がある。おそらくウイスキーの水割を作った時、水が多過ぎてウイスキーが少し薄くなり、ウイスキーをこれに足した経験から、水を沢山足せば薄くなるといったのであろう。しかし胃袋はウイスキーの水割グラスと違って、消化しなければならない。だから、食べ物が入ると胃酸を出す。もし、胃が空っぽなのに胃酸をやたら出していると、それこそ、胃潰瘍、十二指腸潰瘍になる。
それではアルカリイオン水を飲むとどうなるのか。食物と間違えて胃酸を出す。アルカリ性であるから、酸性食品を食べたほどの胸やけはしないが、空腹でいると3時間ぐらいしてから胸やけを感じる。私だけだはないようだから、アルカリイオン水は胃酸を薄めているどころか、胃酸の分泌を活発化していることがわかる。結果的には臭いが薄く、消化された良い便が出る。
科学とは、理論と結論が一致するかどうかの検証を必要とするから、「アルカリイオン水を飲むと胃酸が薄まり、消化が悪い」という狭い机上だけの理論と、「アルカリイオン水を飲むと胃酸の分泌を活発化し、臭いが薄く消化された良い便が出る」という現実の結果を考え合わせると、「アルカリイオン水を飲むと胃酸が薄まり、消化が悪い」というのは間違いであることが簡単に判明する。

篠原医師の診療実績は「誤解だらけの浄水器選び’98」を紹介した中に詳しいので省略します。「水治療は昭和55年に初期段階をはじめ、現在に至っている。当初こそ私自身も驚くようなことが起こり、狂喜したが、そんなことは今や当たり前になっている。方向性としては、数々の成果が上がっているので間違いない。しかしこれからの道のりは厳しい。現在の水滴にも等しい状態から、一大河川の勢いにもっていくには・・・」篠原医師の結びの言葉である。

電解還元水を推進した篠原医師と、同じ医師でありながら批判側にいるNATROM先生一派がおられる。 璋子の日記で著者は篠原医師を「現代の赤ひげ先生とも言える医師」と書いている。そのことは篠原医師の言葉からもうかがえる。

私には「患者を健康に導く使命」がある。だから「ジレンマ」に陥ってはいられない。そのために「帰納法で医者の大原理(患者を健康に導く)に結びつけばいい」「演繹的に生命の大原理(水は生命の根源)に結びつけばいい」と確固たる信念を持つことにしている。
(中略)水治療が経験医学から脱しきれないのは、まさに人材並びに財源が不足しているからである。

現代医療は保険によって私たちは医療費の負担が1割~3割で済んでいる。ということは病院は7割~9割の診療費などを保険から得ることとなる。保険にはいろいろな規定があるだろうから医師はその規定の中で診療や薬を投与することとなる。
ではアルカリイオン水で治療したらどうなるのか? もちろん保険の請求などできない。機械の償却費用は別にして原価の水道代は1リットルあたり20銭。つまり収入にならないのです。
医師の務めとはなにか?「収入を上げることか? 患者を治すことか?」かつて協和病院の河村院長の講演を伺った時の河村院長の言葉です。「収入にならなくとも、水で患者の病気がよくなって元気になって退院していくのなら水で良いではないか。医師の務めは患者を治すことある」。篠原医師と考えか一致している。つまり収入よりも患者を治すことが優先・・という姿が「現代の赤ひげ先生とも言える医師」といわせる所以であろう。

篠原医師は書いている。「薬・検査・手術と同程度、あるいはそれ以上に水を大切にしよう・・・」。
すると途端に各種の分野の人たちから異論が起こる。どんな分野の人たちでも、自分の置かれている分野を最先端に置いておきたい。そうすることで予算がたくさんとれる。施設も充実できる。権威をたもつことができる。

お茶の水女子大「水商売ウオッチング」での天羽女史の言葉をみれば篠原医師の言葉の重みがわかるだろう。

もっと言うと、「現場でコトが起きている」という「思いこみ」「妄想」を振りまかれちゃ迷惑なんですよ。こっちの商売の邪魔になる。何せ、黙ってると、どう見てもヘンテコな製品に補助金がでちゃったり、そういうテーマ限定で競争的研究資金が配分されかねない。それに、今時のことだから、黙ってたら、被害が発生した後で「ダンマリを決め込んで一体何をやっとったんだこの役立たず」と普通の善良な市民から叱られる立場でもあるのでね。
まあ、科学を騙った時点で、学説の流通競争やら研究費のパイの奪い合いやらに参戦したとみなされたってしょうがないと思ってください。

みっともない論である。

批判派は12年前と進歩がなく「狭い机上の理論」の批判の域から脱していないが、電化還元水を使用する病院や医師は確実に増えている。研究もアルカリ論から酸化還元=活性水素論に発展しガンや糖尿病の効果のメカニズムが解明され、医療機器の分野にまで進出し始めている。「「現場でコトが起きている」という「思いこみ」「妄想」を振りまかれちゃ迷惑なんですよ。こっちの商売の邪魔になる。」この言葉こそ、利権を侵されている側の最後のあがきの悲鳴を象徴している。

再び「 璋子の日記 」を引用して結びといたします。

当地でも、大手の病院ながら、麻酔医が全員この春で退職となり、
その後任者が見つからないため存続が危ぶまれていた公立病院がある。
対応策として、他病院から派遣して賄うことになったそうだけれど、
閉鎖となるのは、薄給で勤めてくれる医師がいないから。

かといって、民間病院が医師に支払うような給料で人員確保をするといったことが公立では出来ない。
公務員削減が趨勢の今日、財政的な理由。
医師や病院を頼る患者側にとって、
これはいいことなのかと改めて考えさせられる。

税金で運営されてきた国立や公立大学、
私学助成金を受けて大学経営をしてきた私立大学、
そういった所で医学を学んだ人たちに、卒業後に100%の選択の自由を保障するというのは、おかしいと思うのは、わたくしだけかしら。
数年間、公立病院に勤務することを義務付けて、初めて「税金」で学んだ「恩返し」ができるというものではないのか。
それって、当たり前だと思うのだけれど。

いつの世も、こころある医師によって「医師への信頼」というものが人々の中に受け継がれて来たのかもしれない。
そして、そうした医師というのは、たいていこころに「名医」たる医師像を抱き続けている。そうした医師と出会えた方は、幸せだ。