活躍する女性像(81) 


全日本フィギュア
浅田真央、ハードスケジュールでも「攻める気持ち」で3連覇
 

浅田、安藤の2強に村主が食い込んだ今大会。村主は世界選手権、四大陸選手権の代表にも選出
浅田、安藤の2強に村主が食い込んだ今大会。
村主は世界選手権、四大陸選手権の代表にも選出

女子フリーで気迫のこもった演技をする浅田真央=長野市ビッグハット
女子フリーで気迫のこもった演技をする浅田真央
=長野市ビッグハット

荘厳な「仮面舞踏会」の旋律に乗り、大きなミスなく舞い終えた浅田真央は、両胸にそっと手を当て、しばらく自分の演技をかみしめた。「大きな大会で3連覇したことがなかったのですごくうれしい」。その手でつかんだ偉業に笑顔が弾けた。

疲れは隠せなかった。「GPファイナルのときは、コンビの前にもスピードがあったんだけど…」。冒頭2度のトリプルアクセル(3回転半)など、3つのジャンプで回転不足の判定を受けた。精彩とキレを欠いたことは否めない。

今季開幕戦は11月中旬のフランス杯。その後は続出したジャンプミスを修正しつつ、2週に1大会のペースでNHK杯、GPファイナル、全日本と戦った。「いまは疲れはない」と言うが、緊張が解ければ心身ともにぐったりだろう。

SP2位にとどまった26日夜は「焼き肉を食べます」との宣言どおり、長野市内で大好物に舌鼓をうった。18歳は、優勝したNHK杯、GPファイナルでも欠かさなかった食事をとって疲れを癒やし、しっかり優勝をたぐり寄せた。

来年、バンクーバー五輪と同じ会場で行われる四大陸選手権と、五輪の出場枠を争う世界選手権の代表に決定した。「自分のベストで臨めるように、けがをしないで出たい」。エースの自覚は十分。もちろん、五輪直前の来年末には「3連覇をさらに伸ばす」つもりでいる。(榊輝朗)

[ 2008年12月28日 ]

SPから逆転し、3連覇を達成した浅田真央(撮影・大里直也).
SPから逆転し、3連覇を達成した浅田真央(撮影・大里直也)

 

浅田真央、3連覇へ不満の2位 全日本フィギュア
2008.12.26 19:49

浅田真央の女子SPの演技=26日
浅田真央の女子SPの演技=26日

「月の光」の静かな旋律が終わっても、浅田真央はニコリともしなかった。「もう終わってしまったこと。忘れて明日にいきたい」。精いっぱい切り替えて前を向いたが、不満が募る出来栄えは、こわばったままの顔に正直に書いてあった。

またやってしまった。冒頭の2連続3回転ジャンプだ。1本目で体勢を崩し、続く2本目が2回転での回転不足になった。

今季はフランス杯、NHK杯、GPファイナルの過去3戦とも、この部分で何らかの減点を課され、1度も成功していない。自身、「決めていないので成功させたい」と意欲的で、公式練習から繰り返し跳んで着氷する確率も高かった。

ショックは隠せない。ミスの理由を聞かれると「うーん…。わからないです」。まだ頭の中で整理がつかないようだ。

それだけに65.30点の高評価に浅田真央は「ちょっとビックリ」。ただ冒頭の失敗以外、スピンとステップでは最高のレベル4。芸術性を表す全5要素でも最高点を得た。「残りはできた」との言葉どおり、大崩れせず、手堅く2位につけた。

GPファイナルでもSPは2位だったが、フリーでは女子で初めて2度のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を決めて逆転優勝を果たしている。「攻める気持ちで頑張る」。守りに入らず3連覇に挑む浅田真央にとって、2位はむしろ“好位置”なのかもしれない。(榊輝朗)

浅田真央の女子SPの演技=26日、長野・ビッグハット(撮影・大里直也)
浅田真央の女子SPの演技=26日
長野・ビッグハット(撮影・大里直也)

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大逆転で2位の村主「表彰台うれしい」 フィギュア全日本選手権
2008.12.27 20:46

ショートプログラムでは出遅れたものの、フリーで挽回し、2位に入った村主
ショートプログラムでは出遅れたものの、
フリーで挽回し、2位に入った村主

「表彰台に立てるみたいで、うれしいです」。SP5位から大逆転で2位をつかんだ村主の笑顔が弾けた。2005年の優勝以来、3年ぶりのメダル獲得。「ここ2、3年の苦しんだのがつながったと思う」。しみじみと喜びをかみしめた。

何より喜んだのがフリーの得点が120点を超えたこと。「非常にうれしいこと」。ここ数年、苦手とされるジャンプの改良を重ね、この日は2連続ダブルアクセル(2回転半)、SPで転倒した3回転フリップで加点される成果をみせた。

これで来年の世界選手権代表を確定。それでも村主は「最終目標はバンクーバー五輪」と表情を緩めない。大みそかに28歳を迎えるベテランは、大舞台の豊富な経験を持つ。浅田真央、安藤、中野のトップ3が安穏としていられない“風穴”を開けた。(榊輝朗)

 




ショートプログラムで華麗な演技を見せる村主村主章枝
ショートプログラムで華麗な演技を見せる村主村主章枝



安藤美姫「村主さんにごめんなさいと言いたい」


フィギュアスケートの安藤美姫(トヨタ自動車)が28日、全日本選手権の成績上位者が出演するアイスショー「メダリスト・オン・アイス」に出演し「ケガをしたのが自分だから笑っていられる。村主さんにごめんなさいと言いたい」と、謝罪の意を示した。前日は、世界選手権の出場枠がかかった激戦でまさかのアクシデント。メダルを争う二人の選手が演技直前の練習中に交錯して転倒した。
村主章枝(avex)は驚異的な集中力でフリーでは1位となる会心の演技を見せたが、安藤は右足を痛め、得意のジャンプでミスをするなど振るわずに悔し涙を流した。この日はショーナンバーの「ボレロ」を熱演したが、ジャンプは封印。技のつなぎで転倒したり、右足を軸としたスピンで大きくぶれるなど、負傷の影響が見られ、アンコールに応えることもできなかった。
演技後のインタビューでは「肉離れまでは行かないけれど、ジャンプの練習をしたら踏み切れなかったので、きょうはジャンプなしの演技ですいません」と一言。続けて、冒頭の謝罪を述べると、前日の悔しさがこみ上げたのか涙があふれた。ボードに書いた、今季後半戦のテーマは「光」。
「全日本では光ることができなかったので、世界選手権では自分らしく力強い演技で、人としてもスケーターとしても表彰台に立って、光っていたい」と、苦境からの巻き返しを誓った。 

女子フリーの競技直前の練習でぶつかり、転倒した村主章枝(右)と安藤美姫=長野市ビッグハット
女子フリーの競技直前の練習でぶつかり、転倒した村主章枝(右)と安藤美姫
=長野市ビッグハット