水商売ウォッチングの「クラスター説」批判に対する吉岡氏の「反論]

=「水は変わる」より=

p63
クラスター説は科学的に否定されている
ところがすでに、NMRの吸収スペクトルの半値幅とクラスターについての松下説は、科学的には否定されています。(中略)つまり、クラスターとは関係がないのです。
しかし松下説は一見わかりやすいので世に広まりました。科学的に否定されているという話は、一般の人にはほとんど知られていません。「水の分子工学」を読むなどしなければわからないからです。ですから松下説は今も大活躍です。


よくある説明だが、この主張の間違いは、前回紹介し、批判した、天羽優子氏がゲルマニウムの効能を否定したのと同じ、論理的な間違いである。

天羽優子氏は、ゲルマニウム業者が「ゲルマニウムから電子が出て体をいやす」と説明しているのを否定し、「ゲルマニウムから電子は出ていない」と言った。
そして、「だからゲルマニウムは効かない」と言ったのである。

しかしその論理は間違っている。

天羽優子氏が否定したのは業者の説明であって、言えることは、「業者の説明は間違っている。だからもしゲルマニウムが効くとしたら、それは別のメカニズムだ」という、そこまでの話である。ゲルマニウムは効かない、などとは言えないのだ。

今の場合も同じだ。

松下氏は、「NMRの半値幅が、クラスターの大きさを示している」と主張し、それに対して大河内氏は「NMRの半値幅は、クラスターの大きさを示していない」と言ったのである。それだけのことだ。
では、クラスターの大きさはどうなっているのか。それは分からないのである。
大河内氏はそのことは言っていない。測る方法がないのだから当然だ

p68
現在のところ、水のクラスターを測る方法はないのです。

そういうことだ。
すなわち、磁場を通った水のクラスターが、ふつうの水にくらべて大きいか小さいかは、分からないということだ。だから、磁気活水器のカタログなどに「水のクラスターが小さくなる」という表現があったとしたら、それは間違い、あるいは言い過ぎだろう。

しかし逆に、「クラスター説は科学的に否定されている」という表現もまた、左巻氏が天羽優子氏と同じ論理的誤りをしているか、そうでなければ世間をミスリードするための、「ためにする」過剰な表現である。
松下氏の説明が間違っていたとしても、「クラスターが小さい」という可能性までが否定されたわけではない。

では、クラスターは本当はどうなっているのか。
クラスターが小さい、という説は間違いなのか。

p63
クラスターの小さな水のほうが、大きな水よりその孔を通りやすいので、はやく細胞に吸収される・・・・・・・このような説は分かりやすかったのです。

左巻氏が認めるように、クラスター説は分かりやすい。
だから巷間流布されるのである。では、なぜ分かりやすいのか。

それを考えるには、逆のことを考えるとよい。

もし、磁気活水器から出てくる水に、メーカーが主張するような「浸透しやすさ」がまったく感じられなかったとしたら、どうだろうか。それでも、クラスターが小さいという説は分かりやすいだろうか?そういう説がいつまでも流布されるだろうか?

ここに議論の本質がある。

磁気活水器から出る水に、何の変化もなければ、どんな仮説も無意味であり、どんな仮説も巷間に流布したりしない。
磁気活水器から出る水には、実際に浸透しやすさがあって、それは多くの人が体感できるのである。そこがポイントだ。
その事実があって初めて、それはなぜかと考えたときに、水のクラスターが小さくなっていて、孔を通りやすいのだ、という説明が説得力を持つのである。

分かりやすいというのは、説得力があるということであり、それは仮説を立てるときに大切なことで、説得力のない仮説は、意味がないし、仮説とも言えない。
私は、おそらく磁気活水器を出た水のクラスターは小さくなっているだろう、と推測している。それが、起こっている現象をもっともうまく説明できる仮説だからだ。
その仮説は、やがて何らかの方法で証明されるだろう。

どういう現象が起きているのか、まずそれを知るのが物理学の出発点である。

ニセ科学批判者たちは全員、その基本がまったくできていない。
彼らは大衆はバカだとしか思っていない。
大衆の体感や体験など、自分たちが学校で習った知識に比べて、取るに足らぬつまらぬものだと思っていて、事実を確認しに来ない。
だから基本的なところで大きく間違う。彼らはみな「ニセ学者」である。

p64
吸収がよい水は体に悪い
生理的に考えて、もし本当に普通の水よりも吸収がよい水があるとすると、身体によいはずがありません。(中略)急に吸収のよい水にさらされると、生物体内のバランスが崩れて病気になってしまいます。

これは、ニセ科学批判者が得意な論理のすり替えである。

磁気の間を通った水は吸収がよくなるかどうか、という議論をしているときに、吸収が良くなったら身体によくないじゃないか、などと言うのは論理のすり替えである。
しかしたぶん左巻氏には、それが論理のすり替えだとは分かっていないのだろう。
それに左巻氏の経歴から見て、吸収がよい水が身体によいかどうかを判断する力が、氏にあるとは思えない。また、吸収がよいということは、排出もしやすいということでもありそうで、それならば「流れがよくなる」という可能性があって、それはいわゆる新陳代謝がよくなる結果になるのかも知れない。

メカニズムは推測でしかなくても、事実はどうかというと、私たちの経験では、磁気活水器を取り付けた家では健康面で良いことがたくさん起きていて、逆に、悪いことは何ひとつ起こっていないのである。

何はともあれ、事実から出発すべきではないか。