病気タブーの永田町震撼、民主・山本孝史議員、がん告白
       =がん対策基本法案成立へ協力要請、命かけた訴え=

(5/26夕刊フジ)

私自身、がん患者だ-。5月22日の参院本会議の代表質問で、闘病中であることを告白した民主党の山本孝史参院議員(56)。隠していた事実をあえて公表したのは、同党提出のがん対策基本法案成立への協力を、小泉純一郎首相はじめ全国会議員に訴えたかったから。ある日、突然のがん宣告。団塊の世代のあなたにも突然おこりうる事態をどう受け止めるべきか。山本氏に聞いた。

「患者と同じ立場。自分に与えられた役割」
「笑って、と言われても、笑える心境じゃないけどね(笑)」
カメラを向けるとそういいつつも、表情を作ってくれた山本氏。病気をタブー視する永田町でのがん告白は、与野党を問わず衝撃を与えた。
「がんになったことで、患者と同じ立場になった。当事者として、不足していると思う政策を直接国会で訴えることができる立場。これを受け止め、闘病しながら仕事をしている患者と思いを一つにして、言うべきことを言っていくことが大切。それが自分に与えられた役割だと思う」

自分のことを”新米のがん患者”と呼ぶ。昨年12月行った血液検査で異状が発見され、がんと診断された。「鈍感だからショックはなかった」とはいうものの、「進行する病気だから一日も早く確定的な診断をしてもらいたかった。でも、年末年始で医療機関がやすみだったので…」
がんの種類については「支持者にショックを与えたくない」と言及を避けている。現在は抗がん剤で治療中だが、告知以降、「時間」が大切になった。
「万が一のことを考え、書類の整理や家族に書き残すものを書く時間はある。だけど、1ヶ月先の体調がどうなっているか分からないから、予定をたてることができない。でも、逆にいうと、今日1日に何ができるのか、何をしなければいけないのか、と考えるようになった」

仕事はこれまで通り。「自分で時間をコントロールできる仕事」のためだが、体調で国会を欠席せざるをえないこともあるだけに、今年1月には参院財政金融委員長を辞任した。
「医療技術はかなり進んでいる。がんの場所などにもよるが、治せるようになってきた。大切なのは主治医と力を合わせ、自分の症状を理解しながらやっていくこと。決してあきらめないで。がんは慢性疾患。特別な病気ではないんだということを理解してもらいたい」

参院本会議の代表質問で…
「地域や施設で治療の格差、救える命はいっぱいある」

今回の代表質問では、「がん治療には地域や施設で格差があり、治療法があるのに『もう治りません』と見放された”がん難民”がさまよっている。救える命はいっぱいある」と訴えた。
翌日から事務所に激励の電話や「私はこれで治りました」などのメッセージとともに治療薬などが送られてきた。「たくさん来ちゃってねえ」と笑う。

今の日本は3人に1人ががんで死ぬ。特に、働き盛り世代を含めた35-84歳の死因のトップはがんだ。
「がんを発生させる最大の原因はストレスだと思う。最大の予防はストレスをためこまないこと-。でも気晴らしに仕事をしちゃうんですよね。まあ、闘病生活はいいものではないが、国会議員として何らかの仕事めいたものが残せたら、それはそれでやりがいがあっと思えるのでは」

来年夏に改選期を迎えるが、「1年以上あるので、(出馬するかどうか)先のことは分からないよ」と、このときばかりはちょっと寂しそうだった。

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小沢一郎の剛腕コラム (5/26夕刊フジ)
        民主党提出法案全く審議されず。
                がん対策に冷酷な小泉政治。

先週の党首討論でも取り上げたが、自公与党が衆院で医療制度改革関連法案を強行採決してから、国家は異常な状態が続いている。
民主党が問題にしているのは大きく2点。
まず、この法案が抜本的に手をつけず、国民に負担増ばかり押し付けるひどい中身であること。そして、わが党ががん患者や家族の方々のため、今年4月に提出した「がん対策基本法案」が、自公与党の党利党略から一度も審議に乗せられないまま、棚ざらしされていることに強い怒りを感じているのだ。

がんは現在、日本人の死亡原因の31%を占め、年間30万人以上が命を失っている国民病と言える。
ところが、がん治療の地域格差は広がる一方で、患者や家族の方々は苦痛と不安に苦しみながら、「もっと良い治療法があるに違いない」「何とか助かりたい(助けたい)」と、良質な医療と的確な情報を求めてさまよう「がん難民」となっている。こんな悲惨な状況は放置できない。わが党は、今こそ国と地方公共団体の責務を明確にし、がん対策に総合かつ一次元的に取り組む基本的枠組みを定めようと同法案を提出した。がん治療に対する総合的対策の推進こそが、日本の医療全体が抱える問題を解消する第一歩となると確信したからだ。

闘病中・山本議員の訴えに棒読み答弁
自公与党とも、法案の中身について反対しているわけではない。ただ、民主党が最初に法案化したため、「野党に手柄を取られる」といった狭い了見で審議させないのだという。5月22日の参院本会議で、わが党の山本孝史議員は自らもがん患者であることを告白した上で、「がん患者は身体的苦痛や経済的負担に苦しみながら、新たな治療法の開発に期待を寄せつつ1日1日を大切に生きている」と、法案の重要性について心を込めて訴えたが、小泉純一郎首相は「国会で十分に議論いただくべきものだ」と役人の書いたメモを棒読みしただけだった。

山本議員は昨年末にがんが判明し、現在も抗がん剤治療を受けながら議員活動を続けている。僕はこの報告を受けて胸が痛くなった。
どうして、首相はあんな答弁ができたのだろうか。
郵政解散・総選挙でも分かるように、首相は権力闘争には敏感で、権力維持のためなら何でもするが、それ以外は極めて無関心。国民への思いやりや使命感、責任感といったものはまるで感じられない。ぼくはこれを「心がない」と言っているが、北朝鮮による拉致被害家族への冷酷な態度にもよく現れている。
こんな国民不在の政治を許していいものか。少しでも法案が早く成立すれば、助かる命だってあるはずではないか。冷酷な小泉流政治を放置すれば、日本は本当におかしな方向に進んでしまう。国民の方々にはよくよく考えてほしい。(民主党代表)

山本孝史
【プロフィール】
米国ミシガン州立大学院修士課程を修了し、平成5年に衆院旧大阪4区で日本新党から出馬して初当選。平成8年の再選後は14本の議員立法を提出した。13年に参院大阪区に民主党から出馬し、当選。同党の次の内閣の厚労相や党参院幹事長などを歴任。

参院本会議で民主・山本孝史氏(手前)の質問を聞く
小泉純一郎首相