水を飲もう!、水を飲もう!、水を飲もう!!(2)
前回に引き続き、新谷弘実著「病気にならない生き方」から「水」についてご紹介いたします。
水をあまり飲まない人は病気にかかりやすくなります
水は人間の体の中で様々な働きを担っています。そのなかでもっとも大きな働きは、血液の流れをよくし、新陳代謝を促進するということです。老廃物や毒素を排出し、腸内菌やエンザイムの活性化を促します。ダイオキシンやさまざまな環境汚染物質、食品添加物や発ガン物質なども、よい水はちゃんと体外に排出してくれます。
そのため、水をあまり飲まない人は、病気にかかりやすくなります。
ごく身近な例でいえば、よい水をたくさん飲んでいると、風邪をひきにくくなります。なぜなら、気管支や胃腸の粘膜など、ばい菌やウイルスが侵入しやすい場所がよい水によって潤っていると、免疫細胞の働きが活発化し、ウイルスにとって侵入しにくい場所になるからです。
それに対し、水分を充分にとっていないと、気管支の粘膜は脱水し乾いてしまいます。
気管支では痰や粘液が出ていますが、水分が不足するとそれが気管支にベタッと張りつき、ばい菌やウイルスの温床になってしまいます。
水は血管の中だけでなく、リンパ管の中でも活躍し、私たちの健康を守ってくれています。人間のリンパ管システムは、血管を川にたとえるなら、下水管のようなものです。皮下組織にある過剰水分やタンパク質、老廃物などを浄化、濾過、濃縮した後、血流へ運び込む役目を果たしているからです。その中にはガンマグロブリンという免疫力をもつ抗体やリゾートチームという抗菌作用をもつエンザイムも含まれています。こうした免疫システムが充分に機能するには、よい水が絶対に必要なのです。
水は人間の体のすべての部分と関係しています。水のない体は、命を維持することはできません。それは砂漠に植物が育たないのと同じです。植物が生育するのに必要なものは太陽と土と水だといわれていますが、太陽と土だけでは養分を吸い上げることもできず、木は枯れてしまいます。水があるから養分を取り込むことができるのです。
人間の細胞も水分が行き渡らないと栄養不足になるうえ、細胞の中にたまった老廃物や毒素を排出できなくなるのでさまざまなトラブルが生じます。そして最悪の場合は、たまった毒素が細胞の遺伝子を損傷しガン細胞になってしまうのです。
胃腸の流れをよくするとか、血液やリンパ液の流れをよくするというのは、体における水のマクロな働きです。
60兆個ある細胞の一つひとつに入り、栄養を与え、代わりに老廃物を受け取って処理するというのはミクロな働きです。そのミクロの世界で行われているエネルギーの生産やその過程で発生したフリーラジカルの解毒などには、さまざまなエンザイムがかかわっています。
つまり、言い換えれば、水が60兆個の細胞すべてにきちんと行き渡っていないと、エンザイムはその機能を充分に果たすことができないということです。エンザイムがきちんと働くには、ビタミンやミネラルなどさまざまな微量栄養素が必要ですが、そうしたものを運んでくれているのも水なのです。
しかも、人間が一日に排出する水分量は、汗で蒸発しているものも入れると、約2500ccにもなるといわれています。もちろん食べ物の中にも水分は含まれていますが、そう考えるとやはり最低でも一日1500ccは「水」を補給する必要といえるでしょう。
よく水分をしっかりとりなさいというと「水はあまり飲みませんが、お茶やコーヒーをよく飲んでいます」という人がいるのですが、人間のからだにとっては、水分は「水」でとることがとても大切です。なぜなら、お茶類、コーヒー、炭酸飲料、ビールなどの「水」ではない飲料は、多飲すると血液中に水分を補うどころか、逆に脱水を起こす原因になってしまうからです。これらの飲料に含まれる糖分やカフェイン、アルコール、添加物などは、細胞から血液を奪い、血液をドロドロにしてしまいます。
夏の暑い日やサウナに入った後に、ビールをジョッキでガブ飲みする人がいます。渇いたのどにビールの刺激は爽快ですが、中高年の人で、高脂血症や高血圧の気のある人、糖尿の人などは心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなるので、とても危険です。
のどが渇いたら、ビールでもお茶でもなく、まず「よい水」を飲んで、しっかり水分補給をするように普段から習慣づけてください。
■新谷弘実(しんや・ひろみ)
ニューヨークに在住する、米国ナンバーワンの胃腸内視鏡外科医。世界で初めて、新谷式とよばれる大腸内視鏡の挿入法を考案し、開腹手術することなく大腸内視鏡によるポリープ切除に成功。医学会に大きく貢献する。日米でおよそ30万例の胃腸内視鏡検査と9万例以上のポリープ切除術を行っている、この分野の世界的権威。
米国ではダスティン・ホフマン、スティング・ロック・ハドソンらを診察。日本でも中曽根康弘氏、渡邊恒雄氏、江崎玲於奈氏、野村克也氏、牛尾治朗氏、竹下景子氏、津川雅彦氏など、各界の名だたる人たちから、厚い信頼を得ている。1935年、福岡県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、渡米し、胃腸内視鏡学のパイオニアとして活躍。現在、アルバート・アインシュタイン医科大学外科教授およびペス・イスラエル病院内視鏡部長。
98年に刊行した『胃腸は語る』(弘文堂)はロング・ベストセラーとなり、いまなお売れつつけている。