【天声人語】2006年06月08日
扉が開く。足を踏み入れる。もし、そこに床がなかったとしたら——。エレベーターに乗る時にふと浮かぶ、現実には起こりえないはずの妄想だ。
【感想】
キーワード:機械
床や階段が動き、箱が上下に動く。ドアがひとりでに開く。鉄の箱が道を走り、空を鋼鉄の鳥が飛ぶ。昔の人が今の世界を見たら、さぞ驚くだろう。今では当たり前のようになったこの光景を、みな無害なものと思っている。
それは、技術者の日々のたゆまぬ努力によって生み出された。徹底した安全管理をしてきた。小さい頃はエレベータが落ちやしないかと思い、乗るのが怖かった。
それでも事故は起こる。交通事故とは比べ物にならないくらい少ないが、エレベータが落下したり、今回のような痛ましい事故も起こるだろう。
機械の不具合や部品の故障というのは必ず起こる。それを防ぐのは人間なのだが、その人間が説明を拒んでいる。安全を守るほかに、安心をさせることも仕事ではないのか。
どんなものも凶器になる。それを防ぐのは人間であることを忘れてはならない。