【天声人語】2006年06月07日

 この時季に、しきりに思い浮かぶ中村草田男の一句がある。〈万緑の中や吾子の歯生え初むる〉。木々の緑と、幼子の白い小さな歯との取り合わせが鮮やかだ。そして、人であれ、木々であれ、命を次の世代に引き継いでゆくことの貴さや、生命への深い畏(おそ)れが感じられる。


【感想】
キーワード:子
 動物は自らを犠牲にしてわが子を守る。生まれたときから持っている行動原理だ。人も類に漏れず、もともとはそういう生き物だったし、今も大半はそうしている。
 親が子供を殺す。または、子が親を殺す。そんなおかしなことが起こるようになったのはいつからなのか。大昔からあったのだろうか。それでも今に比べれば少ないだろう。連日のようにTVで報道され、少し聞いただけではいったいどの事件なのかわからなくなるほどに、そんな凄惨な事件が起こっている。
 人は病んでいるのか。病気に対する治療、薬などはどんどん発達している。では、心の病気に対する治療は進んでいるのか。日本ではあまり進んでいるという感じはしない。少なくとも、私は精神科に行くのに抵抗がある。風邪をひいたときのように、気軽に心を癒すことのできる場所へ行けるような世の中を作ることが、これからの日本では必要なのではないだろうか。