【天声人語】2006年06月01日
坂口安吾が「堕落論」を発表したのは終戦の翌年だった。「若者達は花と散ったが、同じ彼等が生き残って闇屋となる」。読んで共感した若き今村昌平さんは、自分も闇市に入り浸って戯曲を書いていた(自著『映画は狂気の旅である』日本経済新聞社)。
【感想】
キーワード:堕落
理想は多くの人が持つものだが、それを実現できる人間は極わずかである。現実を知り、夢破れ、それでも現実の中で折り合いをつけてゆく。そんな人が大半なのだろう。だが、理想を持ち続け、しかし、現実の壁に阻まれ、それでも受け入れられない。そんな人も少なからずいる。
堕落。欲望にまみれ、堕ちる。何かに躓いて起き上がれなくなる。そんな人。救うのはその人自信か。はたまた、友人知人か。まったくの他人か。
堕ちても起き上がる人は、確かにいる。トランポリンは沈めば沈むほど、高く飛べるものだ。バネになる。堕落する人をゼロにするのはただの理想論。堕ちた人を元に戻すのは可能。
要は人が人を救うのだ。