一昨日、日曜夜9時、NHK-BS「スポーツイノベーション」で、C大阪のトップ下にコンバートされ、セレッソの優勝争いに絡む躍進に貢献している山村和也選手が紹介されました。

センターバックやボランチといった守備的なエリアを主戦場にしていた山村選手を、今シーズンセレッソの監督に就任したユン・ジョンファン監督は、第4節からトップ下で起用しました。

「スポーツイノベーション」では、山村選手がディフェンス力を生かして前線からプレスをかけボールを奪ったり、デイフェンスを経験した裏返しで、相手ディフェンダーが嫌がる動きでゴールを奪ったり、高さを生かしたヘディングゴールを紹介したり、さらには、試合終盤にはセンターバックにポジションを移して試合を終わらせるなどの活躍ぶりを、画像データや数値データを駆使して35分にわたって報じてレポートしていました。

そればかりか、データは、彼がJリーグ屈指の運動量を誇る選手であることも裏付けていました。

その山村選手、2015年シーズン終了後、鹿島からC大阪に移籍して、昨年(2016年シーズン)、それまでレギュラーだった山口蛍選手がブンデスリーガ挑戦のため抜けた穴を埋めるべく、ボランチで活躍していました。

ところが山口蛍選手が、わずか半年でC大阪に復帰してボランチのボジション争いが激化、スーパーサブに回りながらもチームのJ1復帰に一定の役割を果たしたようです。

そして今シーズン、就任したユン・ジョンファン監督は、山村選手がボランチの控えに甘んじている姿を見て、すぐさま「宝の持ち腐れ」と感じたことと思います。

山村選手の足元の確かさ、読みの鋭いボール奪取能力、そしてヘディングの強さによるゴールゲッターとしての可能性などを把握して、すぐトップ下というポジションをイメージしたのでしょう。

ここにユン・ジョンファン監督の独自性が見てとれます。常識的にはトップ下の選手の資質とはゲームメーク能力であり、スルーパスやプレースキックに長けている選手の居場所というイメージがあります。

しかしユン・ジョンファン監督の戦術ではトップ下とは第一ディフェンダーの居場所なのです。従来のイメージでトップ下にふさわしい選手を選択すると山村和也選手というチョイスはないと思いますが、第一ディフェンダーというイメージで選択すると、すぐに山村和也選手がベストチョイスになります。

選手と監督の出会い、巡り合いも結構運命的なとろがあり、おそらく山村和也選手が、このタイミングでC大阪にいて、ユン・ジョンファン監督がこのタイミングで監督に就任しなければ、あり得なかったコンバートでしょう。

山村選手は左ひざじん帯損傷のため現在欠場していますが、ちょうど日本代表戦のためJリーグの中断が入り欠場試合数が少なくて済むと思われますが、それでも杉本健勇、柿谷曜一朗ら前線の選手とのコンビネーションが失われ、また第一ディフェンダーとしての効果が失われることで、大きな痛手になっているようです。

今シーズン、C大阪がどのような形でシーズンをフィニッシュするかわかりませんが、少なくともユン・ジョンファン監督が、いとも簡単そうに見抜いた山村選手の眼力がチームを活性化させてことには疑いの余地がありません。

私は、これまでもユン・ジョンファン監督の資質に注目して、今年01月22日の書き込みで「Jリーグ新シーズンの関心、ユン・ジョンファンC大阪監督と、風間名古屋監督」というタイトルで紹介しましたが、さる2012年シーズン、鳥栖の監督をしていた頃からウォッチしていました。

2012年6月3日付けの書き込みは「鳥栖、ユン・ジョンファン監督にみる『監督力』」、2012年の12月9日には「シーズン前半に論評したガンバと鳥栖、対照的な結末」という書き込みをしています。

今回の山村和也選手のコンバートで改めて感じたことは、ユン・ジョンファン監督によって日本人選手の埋もれた才能が引き出されることに対する感謝の念です。監督であれば誰しも持てる戦力を冷静に見極め最大能力を引き出そうとするものですが、コンバートとなると現実にはなかなか多くはありません。

ましてや守備的なポジションの選手をトップ下にという選択は、慧眼という表現がピッタリする力量だと思います。

一方、27歳、選手としてのピークを迎えつつある山村和也選手、ロシアW杯本番に向けてメンバー入りが可能かどうか注目していきたいと思います。

明朝、アウエーでのサウジ戦が終われば、また選手たちは各チームに戻り、ロシアW杯本番でのメンバー入りを目指したサバイバルに入ります。

それを見守る私たち、楽しみな1年を過ごさせていただきます。
では、また。