記者会見--ものの見方について | 回廊を行く――重複障害者の生活と意見

記者会見--ものの見方について

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朝日新聞の夕刊に週1回ほど、元NHKの池上彰氏の『新聞ななめ読み』というコラムが載ります。池上氏はニュースとその背景を噛み砕いて解説するのが上手で、この欄でもなるほどと思わされることがあるのですが、5月25日の「小沢氏辞任記者会見」というのには首を傾げました。内容よりも「露呈した番記者との関係」というサブタイトルのほうが、より問題であるのかもしれません。

5月11日の民主党小沢代表の前日の辞任を受けての記者会見ですが、これを報じる読売の見出しは「『西松事件』ただす声もなく」で、本文では「西松事件による違法献金事件について、小沢氏にただす発言はまったく出なかった」とあり、民主党の不甲斐なさがよくわかる記事としています。しかし読売に民主党のだらしなさを批判できるのかというのが池上氏の意見で、Busines Media誠 によればその会見での読売記者の質問は、「辞意を決断するにいたった経緯、決断したのがいつかということを教えてください。また、今後の政治活動で『新代表を支える』ということですが、例えば総選挙対策として具体的にどのような活動をしていくおつもりなのでしょうか。」であり、小沢氏の責任を問うてはいないから、民主党を批判できるのかというものです。

一方朝日の記者は同じく
Busines Media誠によれば「代表選挙についてですが、『どのような代表が望ましいのか』『現時点で意中の方はいらっしゃるか』についてうかがわせてください。また、衆議院選挙では代表自身が『自分自身の公認は最後でいい』ということでまだ公認をしていませんが、次期衆議院選挙で立候補されるのか、そして(立候補するとすれば)その選挙区はどうなるのか教えてください。」であり、やはり小沢氏を正面から追及していないとしています。

そして結論として「小沢番」の各社の記者たちは小沢氏に遠慮して責任を追及していないとしています。次に出しているのが小沢番でない日テレのキャスターの質問で、これは上記の二人の発言とは違って部分を引用していますが、「ここから先にさらに進んで離党、あるいは議員辞職ということも選択肢として考えられるのかどうかお聞かせください。」これに対して
の小沢氏の発言だけが池上氏の記憶したもののようで、「あなたどこだっけ、会社?」。Busines Media誠にはこれはなく、「なぜ離党、議員辞職しなきゃいけないんですか?」となっています。

そして最後に小沢番でない人の真正面からの質問に小沢氏が腹を立てているのがわかり、小沢氏と小沢番記者たちのふだんの関係が思わず露呈した瞬間だったと結んでいます。

日テレのキャスターの発言に対する評価がブログで見かけるそれとは相当違うこところを見ると、いくらか冷静沈着に見える池上さんでもこうなのかと失望を覚えます。この結びが「露呈した番記者との関係」というサブタイトルとあいまって小沢氏の傲岸不遜のイメージをいやが上にも強めていることを考えると、池上氏のふだんのトーンとあいまって、失望ではすまないかもしれません。

惜しまれるのは、政権交代後は記者会見の出席者をいわゆる記者クラブに限ることはしないという言質を、ジャーナリストの上杉隆氏が小沢氏本人から得ていることが、池上氏の念頭になかったらしいことです。もしあったのであれば、小沢氏の傲岸不遜ぶりはその通りとしても、ことは政治家と番記者の矮小な人間関係というより、記者クラブに情報を独占させようとする構造こそが問題なのであることに、池上氏は当然気づいて上のような論旨展開とはならなかったでしょう。もっとも、小沢氏と番記者というようにまとめてあり、自公政権の誰彼の場合にそういうケースがあることには触れていませんから。池上氏もやはり大マスコミの一員であるのかもしれませんが。

記者クラブについての上杉氏と小沢氏のやり取り は次の通りです。

上杉「政権交代が実現したら記者クラブを開放し(続け)て首相官邸に入るのか。(それともこれまでの自民党政権のように、記者クラブをクローズにしたままにするのか)〉」

小沢 「私は政治も行政も経済社会も日本はもっとオープンな社会にならなくてはいけない。ディスクロージャー。横文字、カタカナを使えばそういうことですが、それが大事だと思っております。これは自民党の幹事長をしていたとき以来、どなたとでもお話をしますということを言ってきた思いもございます。そしてまた、それ以降も特に制限は全くしておりません。どなたでも会見にはおいでくださいということを申し上げております。この考えは変わりません」

(以下上杉氏の文)これによって、民主党は、正式に記者クラブの開放を宣言したことになる。少なくとも、小沢代表の言質は取った。民主党が2002年に記者会見を開放して7年、ようやく世間にも周知されたことだろう。

なお、この後に上杉氏が書いていますが、「
とはいえ、産経新聞のウェブ版以外は、全記者クラブメディアがこの日の筆者の質問と小沢代表の回答を黙殺している」とのことで、これでもって池上氏は免罪されるのかもしれません。

☆長いもの ものの見方の 基準なり


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