「国家」の涙--前空幕長の罪と罰 | 回廊を行く――重複障害者の生活と意見

「国家」の涙--前空幕長の罪と罰

涙天使の涙

田母神前空幕長、防衛省の聴取に応ぜず定年退職に

 「我が国が侵略国家だったのはぬれぎぬ」と主張する論文を書き、更迭された航空自衛隊の田母神(たもがみ)俊雄・前航空幕僚長(60)について、防衛省は3日、同日付で定年退職としたことを発表した。処分はされず、6千万円程度とみられる退職金は支払われる見込みだ。 〔中略〕

  自衛隊員が職務に関する論文発表や講演をする場合、事前に届け出る必要がある。防衛省は田母神氏の論文投稿が「職務に関する」とみており、届けなかった理由や論文の内容について聴いて処分を検討する方針だった。

 だが、田母神氏が聴取に応じないことや、自ら辞める意思がないことを伝えてきたことで、問題の長期化による国会への影響を懸念した同省が異例の措置に踏み切ったとみられる。定年延長は最大6カ月可能だが、防衛省は「浜田防衛相が『これ以上の定年延長は不適切』と判断した」としている。 (Asahi.com08年11月3日

田母神氏は記者会見で「論文がこれほど大騒ぎになるとは思わなかった。もう日本もそろそろ自由に発言できる時期になったと思った私の判断が誤っていたかもしれない」と語ったといわれます(産経08年11月3日 )。これが正しければ、国家を至上のものと考える人たちが大騒ぎしないのは実に不思議だと思います。国家の危機管理にあたって大きな責任を持つ者の一人が、このような明白な誤判断を犯していたことになるからです。内容に対して支持を表明するのは自由でしょう。しかしこのような判断力の未熟な人物が空幕長であったこと、及びかねてから突出した発言を重ねていた人物が空幕長に任命されていたこと、この二つは日本の安全にとってきわめて危険なものであったということは、本来ならば右寄りの論者が語るべきことです。

マスコミにもこの視点は見かけませんが、田母神氏を任命したのは誰かということを報じていないようなのは、さらに合点がいきません。氏が空幕長に任命されたのは2007年の3月で、当時の防衛相は久間章生氏でした。そしてその上の首相は安倍晋三氏でした。つまり、正規の手続きも取らずに時の政府の方針を批判する論文を発表した軍の高官を、任命した責任は安倍・久間の両氏にあるのです。前空幕長とあわせた三名の軽率な決定が、結果的に日本という国の恥を世界にさらしたことになります。危機管理どころの話ではないでしょう。

田母神氏の思想がどのように形成されたかにも興味があります。氏が防衛大に在学中、大学校校長は東大卒の元内務官僚から陸幕長をつとめた大森寛氏から京大教授の政治学者猪木正道氏に替わりました。猪木氏は保守の中ではリベラルというべき人物で、それは現在の五百旗部校長とも通じるものですが、この下で何故あのような偏狭な思想と、人の説を引き写しにする作文作法の持ち主が育ったのか? 猪木氏の前の校長、あるいはそれ以前の校長の呪縛が強かったのでしょうか。それとも校長などとは関係のない、そして社会とは関係のないところで密教的な思想が受け継がれているのでしょうか。いずれ国会論議となるでしょうが、現首相と現防衛相の出席のもとで、前空幕長の他に現校長あるいは現存の歴代校長も参考人として招致して、その辺をじっくり問い糺してほしいものです。安倍氏、久間氏も招致するのはもちろんです。

これを最初に書くべきかもしれませんが、今回の事件は国の規律という意味からも国家の存立を危うくしています。田母神氏が聴取に応じないということでもって処分をしないで定年退職させるとは、何という弛緩でしょうか。そういうことであれば「聴取に応じない」ということで処分ができるはずです。いや、さかのぼって官房長に届け出ないで外部で発言するという、自衛隊幹部には許されない行動も結果的にフリーパスなのでしょうか。これで官房長の処分もできなくなったと、防衛省の幹部層は喜んでいるということでしょうが。その場合彼らには「国家」という意識などはどこにもないことになります。田母神氏自身も、聴取には応じない。処分なしでの定年退職には応じる。アパ社からの賞金300万円は受け取るということで、憧れているであろう武士のイメージからはどんどん遠ざかっていることを自覚しているかどうか。

☆獅子身中 虫より将が 国の恥


 人気blogランキングへ
↑↑<クリックお願いします>↑↑