裁判員法廷の情報保障
<いずれも「はやとくん」を用いた模擬裁判です>
市民が裁判に参加するという裁判員制度が、来年の5月21日から実施されます。もう10ヶ月後であるわけですが、①対象となる裁判が殺人、傷害致死、危険運転致死、厳重建造物放火、身代金目的誘拐など刑事裁判の中でも重いものに限られえているが、公害罪や収賄罪、あるいは行政裁判の方が市民の参加にふさわしくはないか。②裁判員は量刑についても決定しなければならないが、これは負担が重過ぎないか。③裁判員は参加した裁判についての守秘義務を一生負うが、アメリカの陪審員の負う守秘義務はその裁判の最終判決が出るまでであるので、負担が大きすぎないか、などいくつかの疑問点が出されています。
その意味で私もこの制度に諸手をあげて賛成ではないのですが、中途失聴者がクジで裁判員に選ばれた場合、裁判所はどう対応するかに関心をもって、報道を見てきました。その過程で裁判員を加えた模擬裁判があり、それへの出席者を公募していると人に教えられたので、6月の下旬にミニフォーラムというのに参加してみました。これは本格的な模擬裁判ではなく啓発的な催しで、私の場合は同じ区の比較的近いところで行われたのです。内容は啓発映画の鑑賞とそれをテーマとしての模擬評議で合計3時間ほどでした。啓発映画には字幕がついており、これは昨年知人と私とが強く要求した成果であるようで、その点で感慨がありました。啓発映画は何本かありますが、ウェブでも見ることができます
。
知人の示唆もあって事務局とあらかじめメールで交渉することとし、私は手話を使わない聴覚障害者であると連絡して、情報保障としてはパソコン要約筆記か、法律用語に通じた裁判所の速記官による電子速記で、全文の文字化も可能な「はやとくん
」を要請していたのですが、前者は適当な人が見つからない、後者は速記官の業務ではないということで、手書きの要約筆記者ということになりました。進行中は大過ないようでしたが、後で思うと担当者から当然説明があったと思われる事項についての記憶がなく、やはり細大漏らさぬ伝達は困難であるようです。
事後にはっきりとした話し合いの場がなかったこともあり、ミニフォーラムへの感想意見に併せていくつか質問を主催の東京地裁に送りました。正直駄目元の心境で出したのですが、回答をいただいたのは大変良心的だったと思います。しかしその内容は、手話通訳の評価過程や選定については述べていても、肝心の文字系の情報保障については一言も触れていなかったのはいささか非礼でした。前記の通り私自身が手話は用いない中途失聴者で、ミニフォーラムの場合もパソコン要約筆記者を要請したのに手書きの要約筆記者をあてがわれたからです。「はやとくん」の可能性について目を閉ざしていることも理解できません。実際の刑事・民事の裁判で聴覚障害者のために役立った例もいくつかあるというのですが。
もう一つ、最高裁などの見解として報道されているものに「裁判員制度における障害者施策の検討に際して、最高裁判所では外部の障害当事者等を交えた検討委員会等の設置は考えていない。」および「図面・写真や証拠の録音テープなどを見聞きすることが事実認定に不可欠な場合は、裁判員法の欠格事由に当たるとして視覚・聴覚障害者を選任しないケースもあり得る」というのがありますが、これには当然(?)「答える任にない」という回答でした。それはやむ得ないとしても、前者は当事者の発言を尊重すべきという昨今の流れに反するものですし、後者はほとんどすべての視聴覚障害者を締め出す論拠となりかねないものです。これらの見解が公式のものであれば最高裁は裁判員に関するウェブページなりに掲載すべきですし、そうでなくても早急になんらかの見解を明らかにすべきです。
刑事事件の起訴不起訴を決定するのは検事ですが、その決定に異議があれば出すところが検察審査会。ここでも審査員はくじ引きで決められます。以前は視聴覚障害者は検察審査員となることができないという絶対的欠格条項があったのですが、クジで選ばれてから失格とされた聴覚障害者が抗議し、1999年に多くの欠格条項に先んじてこの欠格条項は廃止されました。それを踏まえた規定のある裁判官制度で今の時点でこの状態では、「仏作って魂入れず」であると言わねばならないかもしれません。
☆我が仏 開眼待たずに 歩き出し
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