手帳と聴覚障害者 | 回廊を行く――重複障害者の生活と意見

手帳と聴覚障害者

耳2

毎日新聞 によると北海道で起こった聴覚障害の身体障害者手帳不正取得疑惑で、北海道社会保険事務局は30日、問題の医師の診断書に基づき障害年金を受給していた137人のうち110人への年金支給を4、5月分から停止すると明らかにしたということです。また同紙の別の記事 では、札幌市は26日、虚偽診断書を大量に作成したとされる指定医で、医療法人社団愛生会「札幌駅前耳鼻咽喉(いんこう)科・アレルギー科」の医師に対し、「診断能力に大きな問題がある」として、身体障害者福祉法に基づく指定医を取り消した由です。

この問題は昨年の暮から報道され始め、今年の2月の終わりごろから様々な記事が断続的に出ていました。大きな扱いになることは余りありませんでしたが、地方の福祉行政の不祥事としては報道量は多かったように思えます。中でかなり大きな記事だったのは3月17日頃(地方により違います)の朝日新聞で、東京では朝刊で「聴力偽り?障害手帳 札幌の医師診断、300人返還」。夕刊でも「看護師・民生委員も取得 聴覚偽装最重度の「2級」 障害者手帳」と続けています。

中で問題となったのは夕刊の記事で、「最重度の「聴覚障害2級」の障害者手帳を取得した人の中に、赤平私立病院の看護師や芦別市の民生委員が含まれていることが朝日新聞の調べでわかった。「2級」は補聴器を使っても聞こえない状態とされ、看護師や民生委員の職務をこなすのは難しい。2人ともすでに手帳を返還し、民生委員は辞職している。」というものです。実を言うと最初は私も読みすごしていたのですが、あるMLでおかしいと指摘していたので気づきました。偽装の実態は別として、まず現在の看護師の資格は聴覚障害ということだけでは欠格にはなりません。民生委員にいたっては身体障害でもって欠格とされたことは過去にもありません。「職務をこなすのは難しい」というのは誰の判断なのでしょうか。たしかに楽ではありませんが、こういう文脈で「難しい」というのは、2001年に欠格条項が改正される以前の硬直した考え方です。

以上を含めた記事全体について日本ろうあ連盟が朝日新聞に抗議状 を出しています。これに対して朝日新聞は2級の聴覚障害について「『看護師や民生委員の職務をこなすのは難しい』と表現したことにつきまして御説明します。これは、自治体に取材する中で得られたコメントを踏まえたものでした。しかし、職業選択の制限の不当性、さらにはその撤廃に向けた貴連盟の長期にわたる運動にていて改めてお指摘いただき、認識を新たにした次第です。」と回答 しています。いかにも弁解調で、取材中に得られたコメントであれば無批判に引用せず、自治体の意見であることを明らかにした上で記事にすべきではないかとか、「・・・改めてご指摘いただき、認識を新た・・・」というのは抗議を受けた場合の文例集があるのではないかなどと、いくらでも突っ込みようがある回答です。要するに、障害者なら障害者について、普段からよほどしっかりした認識を持っていないと、いざというときに不勉強が露呈するものだということでしょう。

実は私がこの件で一番書きたいことは、2段目で触れた報道される期間が長かったということです。この事件が繰り返し報道されるようになったのは2月中旬のイージス艦事故のすぐ後くらいからですが、後者について今でも報道は時々ありますが断続的で、障害者手帳の事件とは問題のスケールが違うことを考えると奇妙な感じが拭えません。新聞の投書欄に、この事件の報道で聴覚障害者の肩身が狭くなったというのもありました。あるいはこの現象は社会保障費の削減とつながっているのではないかというのは考えすぎでしょうか。この手帳に報道の中で、障害者に年金があること、移動にあたって補助が出ることがあること(これには他の事件もありましたが)、税金の控除があることなどが繰り返して触れられるので、それらを知った人々の間で障害者の「優遇」に対する風当たりが強くなることを期待しているところがあるような気がするのです。この件について息永く情報を出していくのは、これは当然労働厚生省のサイドしかありませんから、少しでも支出を減らして年2200億円削減という目標に近づけようとしているのではないでしょうか? 陰謀史観にすぎると言われそうですが、社会保障予算の削減額 も誤解させたままであることも考え合わせるとどうでしょうか。

☆壁あるが となりは緑と そそのかす


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