忘却とは | 回廊を行く――重複障害者の生活と意見

忘却とは



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 組閣に当たっては「身体検査」と称して大臣などの候補者の身辺が調査されるそうですが、その甲斐もなく佐田源一郎行政改革担当相が政治資金に関する不祥事のために更迭されました。身体検査というと激職に耐えられるかの検査のように錯覚しますが、実態がそうであれば「素行調査」の方が適切だと思われます。報道の通りであれば、この事件は佐田氏の起訴にまでつながりかねないものですが、おそらくそこまではいかず、事件の詳細もはっきりしないうちに報道から姿を消すでしょう。有力者の事件がらみの辞職はまず2件で終わりで、その後はガードが固くなり、マスメディアにも阿吽の呼吸があり、財務相とか農水相とかまだ火ダネはありそうですが、まず大丈夫でしょう。


 「忘却とは忘れ去ることなり。忘れえずして忘却を誓ふ心の悲しさよ」とは菊田一夫作の大メロドラマ『君の名は』における名セリフです。同語反復に過ぎない第一文に対して、第二文は意に反して忘却を強いられる悲しみを名調子でうたい上げたものです。この筆法でいけば、今の日本人は「忘れるべからざることを、マスメディアの飽きっぽさのゆえに忘れさせられる悲しさよ」と、どうも調子はよくないですが、こう表現するしかないでしょう。


 悲しみをもたらす主犯はもちろんマスメディアではなく、それと共生する「お上」です。この仕組みに気がついたのは田中金脈が問題になった頃でした。正確にはその末期ですが、辞任した田中元首相は「いずれ国民の前にすべてを明らかにする」と約束しました。しかしそれから十九年、とうとう約束は果たさずに元首相は亡くなりました。刑事被告人となったのですから、元首相側にはそれなりの理由もあったかもしれません。しかし田中金脈を発掘して攻撃したマスメディアが、約束の不履行を言い立てることがなかったのは不思議です。さらに元首相の没後、政治的・経済的遺産を相続した田中真紀子氏も約束については皆目触れず、彼女を攻撃したマスメディアもその点にはノータッチだったのは強調しておくべきでしょう。


 その後は同様のプロセスをたどった事件が累々と続いています。竹下・中曽根の両元首相や宮沢喜一・安倍晋太郎・渡辺美智雄氏等への、賄賂性が強いと言われたリクルートコスモス未公開株の譲渡。首相辞任につながったと見られる某社と細川元首相の金銭関係。いずれも辞任等で報道が切れ、事実関係は伝わっていません。


 最近ではさらに事情は悪性化し、年金料の不払いで民主党の管代表は辞任したのに、同様の事態があった小泉内閣の閣僚は福田官房長官以外は責任を取らず、そのことでマスメディアが批判することも少ないという有様でした。民主党の議員が選挙時に学歴を偽ったとされて辞職したのに、イギリスにおける大学入学の経歴が疑われた小泉首相には累は及んでいません。民主党議員の場合はマスメディアの一部がアメリカの当該大学まで出張って調査した一方、小泉氏のためにはそういう労はとられなかった模様で、不公平さを恥じることはないという時代に突入したことを思わされます。先に名をあげた田中真紀子氏も秘書給与の取り扱いで不法行為があったかに報道されましたが立件されず、同様の件で名の挙がった社民党の議員は起訴され有罪になったのに、この両件を比較して報道するという姿勢はもはやマスメディアにはないようでした。


 「美しい」などという形容詞を使うのは、政治的に損だとどこかに書いてありましたが、本当にそうだと思います。でもせっかくだから使わせていただきましょう。「美しい国では、権力を握る者の履歴は永遠に美しい」。


☆検査した 結果を読めぬ 若い藪



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