杉谷:嫌な言い方ですがわかりやすく言うと、「どれも気に入っているけどどれも気に入っていない」ですね。作品に対しての思い入れはもちろん創る段階からあって、創るまでの過程はすごく楽しんでます。でも特にCMなどは人が判断するものなので僕らの主観は一切省かれた状態で成立させないといけないので、そういった意味で人一倍動きに対する思い入れは薄いかもしれません。つまり興味を持ちすぎないよう距離感をはかっているというところはあります。「この動きは面白かったから次でも使おう」というのは仕事としてアウトなので、何があってもそれはその企画で、出来上がった作品に関して特に思い入れはないというのが前提です。ただそうなったときに、初めて『UNIQLOCK』というWebCMで僕らの出来上がったものについて聞かれた取材があって、追加意見や再確認していくという意味では、『UNIQLOCK』は印象に残らざるを得ない出来事でしたね。


丹野:『UNIQLOCK』の1作目の舞台は日本ですよね。2作目からは海外へ?


菊口:フランスに行ったのですが、キャストを除いてみんな飛行機はファーストクラスでクリエイターを大事にされているんだなということをすごく感じました。


杉谷:それについて言えば、もともと昔の日本映画などは、ものをつくるスタッフが初めにあって、その次に役者がいるという部分もあったりして、ある意味で僕らも仕事に携わっていく中で役者ともバトルしていかなきゃいけないこともあります。そういう点で言え振付師という仕事を向上させていくこと名目に、もう少し裏方の仕事をしっかりとさせていきたいなと思いますね。職業としてちゃんと出来るということを僕らは僕らの世界で伝えていけたら良いなと思います。

丹野:踊ることと振付のセンスって別だったりするじゃないですか。振付は設計に近いと思うんですが、踊ることは出来ても設計が苦手だという方への何か良いアドバイスはありますか?

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杉谷:の企業秘密ということであまりヒントは出したくないのですが(笑)。すごく変な言い方ですけど、まず身体が動きたくなっても我慢する。音を聞きながら身体を動かして考えていると行き詰まってしなうので、頭の中で整理して、自分の中でイメージを膨らませて、シュミレーション出来た段階で動くんです。僕らがユニットを立ち上げた根本的な考えとして、1人だと不安になって音を聴いて踊りますが、2人いたら、「どうよこれは?」とディスカッションしながらダンス競争認識が生まれることからなんです。この音だからこうというのではなく、この音に「コレをはめたら?コレをはめなかったら?」という素材を用意してから、繋ぎあわせて何が出来るだろうかという考え方なんです。設計をする為には動かずに自分の中で想像を膨らませるっていうのが、アバウトですが、実は構成をしていく振付師にとっては、一番大事なことだと思うんです。


丹野:一般的には動きながらイブスで作れといわれますが、非常に面白くて斬新ですね。


杉谷:バイブスって言いたいんですけど、やっぱり違うなって。バイブスを排除しないと駄目なんだなって。そのことによってダンスから距離を置けるので、それがどうなっているのかというのを想像することが出来る。それこそ年間1000曲くらい振りつけるんですけど、振付の前にディスカッションして答えを出してから動くので行き詰まったことは一度もないですね。身体を動かしていたら人間の可動範囲って決まってしまいますが、僕らはもっとすごいことが頭の中で出来るじゃないですか?もっとすごいアニメーションってなんだろうって考えることで、それが1つの突破口になると思っています。


丹野:最後にJSDAについて意見やアドバイスをお願いします。

杉谷:すごくざっくり見ると良いことだと思います。ダンスの間口が広がる可能性があるし、今までなかったところに目を向けている。検定マニアという人たちもいるし、そこにアプローチを掛ければ自然に人が集まるし、方法論として良いと思います。でもそれと同時に恐いのは、ストリートダンスって僕らの中だけにあるスタイルだったりして、スタイルやジャンルなんてあってないようなものなので、そこを一括してやることで壁にぶち当たらないかなと。例えば、ロッキンでも大阪と東京でもスタイルが違うじゃないですか?間口が広がるかもしれないけど、検定としてジャンル付けしてしまうと諸刃の剣というか矛盾点は発生してしまわないかなと思います。それについはは、どう思われますか?


丹野:何が正しいかということが確かになくて、ジャンルを指摘されれば誰が作ったものですごく難しいことではあります。ただその中で、あえて基準を作るという意味では「これがヒップポップだよ」というよりも「これがJSDAが考えるヒップホップです」と言い換えれば1つJSDAの提唱するジャンルという考え方かも知れません。 検定に合格して資格を持った人たちが仕事がほしいと思ったときに、全然関係ない業種の人事の方に「私はこれをもっています」と言っても、ある程度の信頼にはなると思っています。そこの基準を定めるために検定としてトライしてみたいなというのがあって、いろんな選択肢の一つになるといいなとおもっています。


杉谷:それを聞いてすごく共感出来ます。誰かが一度門を開かなければというタイミングに、ある影響力のあるavexさんが始められるということはすごくストリートダンスにとっての可能性を広げようとしているという考えとしては共感します。もっと細かく詰めると、「バックダンサー兼振付師」という人材を増やしていくことはある程度出来るんですが、もうちょっとクリエイティブな振付師などが自然に育つ仕組みを組み込んで頂ければ・・・と結局丸投げになってしまうんですが(笑)。

ある意味、日本ではダンサーよりも地位の低い仕事なんです。その辺りを上手い具合に振付師という部分も検定に盛り込んでいただけると僕らも協力しようがどんどん出てくるなと思っています。


丹野:僕らも振付に関してはすごく重要なものであるし、そこの部分は身体能力とは別の部分でもあって、世界でも通用するコンテンツでもあるなと思っています。中身のコンテンツとかカリキュラムをもっとブラッシュアップしていかなくてはいけなくて、その中で振付という部部は入ってくると思います。頂いたアドバイスは生かして生きたいと思います


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丹野:今までに多くの作品を振り付けされていますが、個人的に印象に残っているものはありますか?