スペシャルインタビュー「air:man」 前半 | JSDA オフィシャルブログ 「MORe Dance」 Powered by Ameba

スペシャルインタビュー「air:man」 前半

身体を動かしたくなっても我慢する。

自分の中で想像を膨らませるっていうのが

振付師にとっては一番大事なことだと思うんですね。


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air:man

【プロフィール】

振付稼業air:man(エアーマン)

「とてつもなく格好良いモノを創る」という野望のもと、1996年9月に旗揚げされたダンスを推進する演劇集団「air:man」の主宰、杉谷一隆と菊口真由美が中心となり、新たに立ち上げた複数人数からなる振付ユニット。
代表作品

TV-CM

「ポッキー」・「TeoO」・「野菜一日これ一本」・「十六茶」・「酔わないウメッシュ」・「虫コナーズ」・「森永・ハイチュー」など他多数。
PV
木村カエラ「Ring a Ding Dong」・新名林檎「都合の良い体」・東京事変「女の子は誰でも」・RIP SLYME「熱帯夜」・サカナクション「ネイティブダンサー」、「バッハの旋律を夜に聴かせたせいです。」など他多数
TV
テレビ東京「ピラメキーノ”ピラメキ体操”」「Onaraはずかしくないよ」など他多数


丹野:まずは、お二人それぞれのダンスを始めたきっかけを教えてください


杉谷:マイケルジャクソンの『スリラー』のPVを小学生の頃に見て「なんだこれは?!」と思って。その頃のマセていた僕らにとって、洋楽を聴いたりPVを観るのがステータスで、授業の終わった教室でラジカセを持ってきて、バレないように学校が閉まるギリギリまで毎日『スリラー』の完コピを練習していたのが始まりです。


菊口:私は、ミュージカル『アニー』のメイキングをTVでやっていて、振その番組で振り付け師を知って「自分も振り付け師になりたい!」と思って、ダンスを始めました。それが小学校の3年生ですね。舞台に立って踊るより、それを作る側に魅力を感じました。『振付師るにはどうしたらいいんだろう、色々なダンスを踊れなきゃいけないんだ』ということで様々なダンスをやってみました。しばらくすると表に出るよりもその裏を見ている方が好きことに気付いて、アニーの役ではなく、振り付け師になりたいがために『アニー』のオーディションをずっと受けていました。(笑)

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丹野:今までインタビューしたほとんどのダンサーさんがマイケルに影響を受けてダンスを始めたと答えているんです。やっぱりマイケルの功績は偉大ですよね


杉谷:マイケルはダンサーとしても偉大ですけど、プロデュース力も長けていて、楽曲もライヴもちゃんとエンターテイメントに仕立てるという、最高の裏方の人でもあると思います。表と裏を同時に兼ね備えている人はなかなかいないですね。僕らも表に立ち裏側の仕事をしていくのは絶対に無理ですね


丹野:よく聞かれる質問だと思いますがair:man」という名前の由来はなんですか?


杉谷:空気のような」とか「ムーンウォークをイメージして」など皆さんいろいろな想像してくださるんですが、僕らの初期のメンバーでバスケットシューズの『エア・ジョーダン』を買ってきたのが裏を見たら『エアーマン』と書いてあって「これパチモンじゃん!」て話になって(笑)。丁度そんな時にユニットの名前を考えていてノリで「これでいいじゃん!」っていうのが始まりですね。そのままパクっても面白くないからダブルコロンでも入れようと・・・本当いい加減な由来です。(笑)


丹野:話は変わりますが、air:manさんが仕事の上で目指しているダンス観や振付に関してのスタイルはどんなものですか?


杉谷:僕らは踊るのではなく踊らせる側なので、その人が踊って映えるもの、その人にスタイルの踊りを作ることが全てです。つまり、毎回創るたびに新しいスタイルがあるということです。その人がその企画においてどう見えることが良いのかという考え方がきっとCMの仕事が増えている理由だと思っています。CMは自分たちのスタイルは何処にも入らないものなので、そこになおかつ「誰でも出来るじゃん」というものではなく、air:man流ストリートダンスという提示をしなくてはいけない。CMに限定していうと、実際に商品を説明しなきゃいけないとなると踊りのスタイルを見せている時間もないんですよ。15秒のCMでどんなに良く踊っているように見えても10秒踊っていないです。カウントに直すとツーエイトしか無くて、カット割りもたくさんある場合だと下手すると1小節もないんです。2拍とかで踊りを見せなきゃいけないことの繋がりを考えたときに、見た瞬間に目に飛び込んでくる変な形だったり、ダイナミックな動きだったり、逆に何もしてない地味な動きだったり・・・カット割りの繋がりも考えつつ、一つ一つが印象に残っていくことをしなきゃいけない。面白いもと面白いものを身体の動きに無理なく繋げていくというのがCMの振付の考え方になります。そういった面で、air:manらしさはと人によっては「変」「コミカル」な風に思われるかもしれないですが、僕たちの中ではあんまりコミカルなことをやっている意識はないですね。逆に、短い時間の中で印象づけられて、成立するものとなると、ある程度見えやすく面白くてわかりやすい、というものを毎回抽出して積み重ねて出来上がるものなので、多分それを代理店や制作会社さんはざっくりと「キャッチーですよね」とか言われるのだと思います()。でもそういうことなんだと思いますね。


丹野:今までに多くの作品を振り付けされていますが、個人的に印象に残っているものはありますか?


杉谷:嫌な言い方ですがわかりやすく言うと、「どれも気に入っているけどどれも気に入っていない」ですね。作品に対しての思い入れはもちろん創る段階からあって、創るまでの過程はすごく楽しんでます。でも特にCMなどは人が判断するものなので僕らの主観は一切省かれた状態で成立させないといけないので、そういった意味で人一倍動きに対する思い入れは薄いかもしれません。つまり興味を持ちすぎないよう距離感をはかっているというところはあります。「この動きは面白かったから次でも使おう」というのは仕事としてアウトなので、何があってもそれはその企画で、出来上がった作品に関して特に思い入れはないというのが前提です。ただそうなったときに、初めて『UNIQLOCK』というWebCMで僕らの出来上がったものについて聞かれた取材があって、追加意見や再確認していくという意味では、『UNIQLOCK』は印象に残らざるを得ない出来事でしたね。


丹野:『UNIQLOCK』の1作目の舞台は日本ですよね。2作目からは海外へ?

菊口:フランスに行ったのですが、キャストを除いてみんな飛行機はファーストクラスでクリエイターを大事にされているんだなということをすごく感じました。

杉谷:それについて言えば、もともと昔の日本映画などは、ものをつくるスタッフが初めにあって、その次に役者がいるという部分もあったりして、ある意味で僕らも仕事に携わっていく中で役者ともバトルしていかなきゃいけないこともあります。そういう点で言え振付師という仕事を向上させていくこと名目に、もう少し裏方の仕事をしっかりとさせていきたいなと思いますね。職業としてちゃんと出来るということを僕らは僕らの世界で伝えていけたら良いなと思います。