東京江東区23歳の女性不明事件に想う 4
その9 被害女性発見
■男性が書いた女性を埋めた場所の紙を手がかりに、東北の山中に居る捜査員がその場所と思われる状況の写真を何枚も撮影し、捜査本部に衛星電話の画像転送装置を使って写真を転送した・(当時は映像を送信する技術は一般には普及していなかった。)
■男性は送られてきた山中の写真を見て取調中の刑事に道案内をした。
■現場は、地元では少し有名な『○○高原』の入口から車で7キロメートル程入った場所で、車を路肩に駐車しそこから緩やかな斜面を歩いて300メートル程降りた場所であった。既に夕刻となっており現場は薄暗くなりだしており、投光器を使っ て周囲を明るくしながら作業を慎重に進めていた。ただ夜になると現場は完全に真っ暗となってしまう場所であったことから機動隊の投光車の応援要請をしていたがまだ現場には到着していなかった。
■通常は現場に犯人を立ち会わせて捜索を実施するのだが、取調場所と現場が800キロも離れている事から、発見した際の証拠を保全するために『地元の市職員』に立会をお願いしていた。(犯人しか知りえない事、今回は女性を殺害して山中に埋 めた、その場所を案内している=秘密の暴露という。)
■捜索を開始しだしてから既に5時間が経過し、辺りは真っ暗となり機動隊の投光車が現場に到着するまで作業を中断しようとしていた時であった。人間の足のような物が土から現れた。捜査員は夢中で、そして慎重にその場所を掘り起こしていた。 スコップを捨て手で慎重に傷が付かない様に…これ以上女性を痛め付けたくない一心で…。徐々に人間と思われる遺体が姿を現した。既に3か月経っており、腐敗し無残な姿となっていた。周囲は鼻をつんざく程の腐敗臭が漂っていたが誰一人『臭い』といった言葉は言わなかった。それどころか、【辛かっただろう。寂 しかっただろう。もう少しで妹さん、両親のところに帰れるからな。頑張れよ。】刑事達は作業中、眠っている女性に一生懸命、一生懸命、声をかけていた。
その10 自白後の取調
男からの供述は
■1年ほど前に嫁とうまく行かず、嫁が出て行った。そして今のマンションに一人住まいをする事となった。
■半年前に年頃の姉妹が引っ越ししてきた。仕事でも余り上手く行かず、事件当時、ムシャクシャして風俗に行こうと電話をした。しかし既に午前0時をまわっていて風俗は閉まっていた。その時、2軒隣に年頃の姉妹が住んでいる事を思い出した。
■トイレットパーパーを借りにいく口実でチャイムを鳴らした。すると姉が玄関口まで出てきた。何度か顔を会わす同じマンションの住民なので安心したのか、ドアチェーン越しにドアを開けた。【今日は姉が一人…チャンスや。お酒も入っていての事か欲望が自分を変えた】私は【トイレットペーパを借りたい。あ、自宅で電話が鳴っている。すみません、持ってきていただけませんか?】低姿勢な私に人を 疑った事がないであろう女性は笑顔で承諾した。
■姉の方の女性は、私の部屋の前でドア越しにトイレットペーパーを渡した。私はわざとトイレットペーパーを床に落とし酔った振りをして自らも床に倒れた。
■女性は私を介抱しようとドアの中に入ってきた。その場で相手の首を絞めて脅した。女性は必死で抵抗しようとしたが力の差がありすぎた。途中で抵抗を辞めた。女性に乱暴をした後、女性は放心状態であった為、もう抵抗しないだろう。そう安心 した時、女性が馬乗りになっている私に眼潰し攻撃をし【絶対に警察に訴えてやる】そう言ってきた。
■私は【やばい、刑務所行きになる。】と思いその場で首を絞めて殺した。そして車のトランクに女性の死体を入れ故郷である東北の山中に持って行き、そして女性を埋めた。
という内容であった…
その11 遺族の元へ
■日が変わった午前1時、遺体…いや女性が山中から助け出された。刑事達は昨夜から一睡もしていないがそのままトンボ帰りで、妹さんの居るマンションへ、故郷へ向かった。来た同じ高速道路を走ったのだろうが、気付いた時には捜査本部のある警察署に到着していた。
■捜索が終わった夜中、捜査本部から妹さん、ご両親が居る場所に電話が入った。母親が電話に出られた。【ええーっ、嘘でしょー。…お父さん、ああー。】母親は腰を抜かした状態でその場で泣き崩れた。
■警察署に到着した翌日、女性は妹さん、お父さん、お母さんの元に戻された。
■最後の捜査会議で『妹さんからの調書(思い)』が読み上げられた。【お姉ちゃん、25歳のお誕生日おめでとう。お父ちゃんもお母ちゃんも喜んでいるよ。】25本のろうそくの灯りから、お父さん・お母さんの姿が映し出され、その表情から は笑みが浮かんでいた。被害者の遺族調書はその場に姉が居るかの様に語りかけている内容で作成されていた。遺体が発見されてから『3日後』が女性の25回 目の誕生日であった。調書は50枚以上にわたって書かれていた。本来であれば【犯人が憎い。姉と同じ目にあわせてやりたい。殺しても足りない。】という言葉が連発して出てくるのであるが、妹さんの遺族調書にはそういった怨恨の感情を出した内容は一切書かれていなかった。姉妹愛のみが書かれていた…。ただ調 書の最後に、犯人に対して【なんでお姉ちゃんを殺してしまったの…教えてください。】その一言が書かれていた。それが反対に捜査員達の心に突き刺さった。
その12 被害者の女性へ、そして遺族へ
■既に10数年以上たった今ですが、再び同じ様な事件が繰り返されている現代社会に戸惑いを隠す事が出来ません。【事件を解決したい…しかし出来れば事件に巻き込まれていない方がいい。】解決しても決して晴れ晴れとした気持ちになれない悲惨な事件が後を絶たない…。私は数年前に刑事を去り【刑事事件解決】から【家庭の問題解決】、『家庭の中のもっと身近な心の痛み』を解決する『探偵』という仕事をしています。
■『警察でストーカーとして認定してくれない相談事』を解決してあげたい。
■『遠方で一人暮らしをしている女性の安否を両親に代わって』確認してあげたい。
■『急に所在が不明となって捜索願いを出したが警察は事件でなければ動いてくれないこと』を解決してあげたい。
■『家庭が崩壊する危険性のある浮気問題等』を解決してあげたい。
と思ったからです。本当に当時の状況を思い出し、少しでも皆さんが『心の痛み』ということを感じ取っていただければと思い掲載させていただきました。今回亡くなられた女性、そして私が担当した女性のご冥福を心からお祈りいたします。
元県警刑事のプロ集団
JSD日本総合探偵社 代表取締役 大久保秀幸
解決の参考になります。