30年越しの決意 | 探偵ブログ【JSDが送るこころの交信所】

30年越しの決意

カウンセラー『O』より

午後11時、事務所の一本の電話が鳴った。
『もしもし、結婚調査じゃないんですが・・・結婚調査じゃないんですが・・・私の気持ち・・・わかりますか?』
私は、電話の向こうの女性を落ち着かせ彼女の発する言葉に耳を傾けた。電話の向こうの女性は私の母親と同じ位の初老の女性。しかし、彼女の気持ちは『恋する少女』であった。
  『私は30年もずっと我慢してきました。25歳の時、気づけば彼の赤ちゃんを妊娠していました。彼は駆け出しの医者の卵でした。彼を好きになったけれど全く彼の事を知らなかったのです。私は、彼に結婚をして欲しい、そしてあなたの赤ちゃんを産みたい・・・こう伝えたくて彼の元に向かいました。彼は、車で私を迎えに来てくれました。車の助手席の下には、見たこともないヒールが置かれていました。彼はそのヒールを手に持ち・・・ごめんと一言・・・気がつくと私は、一人寂しくアパートに居ました。私が堕胎したのは男の子と女の子の双子でした。』
  『そして30数年経ち、私も定年退職を向かえて、当時の気持ちを彼に伝えたく、そして、30数年引きずってきた気持ちを捨てようと、再び彼に会いました。・・・彼は30数年前のままの彼でした。
  気がつくと彼の住むマンションの近くにアパートを間借りして住んでいました。2度恋をした私は、彼を自分のものにしたい・・・そういう気持ちがこみ上げてきたのです。今、彼は奥様と一人の子供いると薄々知っています。でも、私は・・・彼を愛してしまっているのです。このまま、彼の本当の気持ち、彼の本当の生活を知らないまま、あと僅かな人生を閉じた方が良いのか。・・・でも彼の事を知りたい。』
私は、彼女にこう伝えた『本当の事を知って、そしてあなたの本当の気持ちを彼に伝えなきゃ。生まれてこられなかった2人の子供のためにも。』