山田洋次監督「キネマの天地」(1986年)がNHKBSPで本日放送。

 


「キネマの天地」は松竹の今はない撮影所、大船撮影所50周年記念の大作映画で

同じく山田監督のジュリー主演の「キネマの神様」は松竹映画100周年記念でした。

 

渥美清さん主演。100周年の大作というだけあって、当時のオールスターキャストが勢ぞろい。

渥美さんは、寅さん役以外で出演した最後の作品になったそうな。冒頭とラストシーンには藤山寛美さん。そういえば藤山さんは松竹新喜劇。松竹歌劇団の歌い踊る 桜咲く国~♬ のレビューも楽しくて、朝ドラ「ブギウギ」を思い出します(^-^)

 

監督役でサリーが出てる!マチャアキも!

サリーは「悪魔のようなあいつ」から11年、1986年には役者としての基盤をしっかりと築き上げてきたんだなと思えた。実際に、演技を始めた最初の頃に感じたフワフワとした無重力感が無くなって、演技にしっかりとした重み、貫禄も出ていた。サリーはこの当時にはすでに40前だものね。

 

「キネマの天地」は、あらすじ自体はそう込み入ったものではない作品だけど、当時のカツドウ屋の姿や時代背景などを絡めて、面白く見ることが出来た。

「キネマの神様」(2021年)の物語の背景の1960年代後期には すでに映画界の斜陽が始まっていた時代とは違い、「キネマの天地」は当時の撮影所の活気あふれる様子が描かれていて、個性的な監督の面々や、撮影所スタッフの姿などが面白かった。特に、数多く出演している当時の一流の喜劇俳優陣の顔ぶれを見ているだけで、この人もあの人も!と見ていて興味がつきなかった。寅さん映画に出演俳優陣はもちろん、山城新伍、ハナ肇、すまけい、関敬六、笹野高史、それぞれの軽妙な演技を見ているだけで面白い。

 

この映画は、当初は主演のはずだった藤谷美和子さんが急に主役を降りたので、無名の新人の有森也実さんが大抜擢された、ということは知っている。劇中で映画監督が語る『役者に逃げられるなんて 監督も終わりだ・・』という台詞があって、まさに山田洋次監督が、自分に向けて言っているに他ならずで、苦笑してしまった。

「キネマの神様」のインタビューで山田監督が「主演俳優が亡くなるなんて初めて」と語っていたが、山田監督は松竹の記念すべき映画の二作ともに、主演に逃げられ、主演に死なれ、の大ピンチになっていたとは。今では、二作ともに代役で良かったんじゃないのと思いますけどね、わたしは。

 

「キネマの天地」と「キネマの神様」、どちらもよく似たタイトルのこの二作の、とてもよく似ている場面はラストシーン。主人公の「死」。あんまり状況が似ているので、あら、と思ってしまった。もしかしたら、監督が思う映画人として理想の最期なのかもね。

 

「キネマの天地」と「キネマの神様」、そしてこの二作の大きな違いは「天地」はまさしく映画全盛時代の活動屋(俳優、監督、スタッフ、映画会社)の話で、「神様」は家族の話しだったこと。1986年の制作と2021年の制作、35年の年月は作品の内容の何を変えたのか?と考えながら、出演俳優の豪華さや多彩さは「天地」に大きく軍配が上がるけれど、実は一番の製作上の違いはコロナ禍だったのかもね?

 

ラスト、画面に流れていく錚々たる面々の名前を見ながら、おっ!と思ったのが、真ん中あたりのお名前。

今では人気者の無名時代の名前を見るのも興味深い。オーディションで選ばれたそうですが、どこに出ていたのか全く気が付かなかったわ~(撮影スタッフだったそうです)

 

本当は山田監督で今一番みたいのは「小さいおうち」(松たかこさん主演)です。