2025年11月の高市首相の台湾問題が存立危機事態にあたるという発言が問題になっていますが、集団的自衛権の前提となる米国の台湾問題への介入が、まずは国連憲章に違反しています。このことについて、私が会長をつとめる法律家団体(アジア太平洋法律家連盟COLAP)が声明を出しましたので、以下に紹介します。
そしてそのような国際法違反の米国の介入に共同して、日本の自衛隊が軍事的に関与することも、これまた国際法違反です。
台湾に対する日本と米国の干渉についてのCOLAP声明
2025年11月29日
1. 高市発言の内容と安保法制
日本では安保法制(2015年)の制定により、それまで憲法9条で禁止されていた集団的自衛権の行使が初めて認められるようになった。安保法制によると米国による攻撃が、日本の存立危機事態になる場合、自衛隊は米国との集団的自衛権ができることになる。2025年11月7日、高市首相は、中国が台湾に武力行使した時には、安保法制の存立危機事態であり、日本が米軍とともに軍事行動をとることができる、という旨の発言をした。日本政府の「台湾」という名前を名言しての発言は初めてであり、中国は内政干渉だと反発している。
2. 日中共同声明における日本の台湾に対する立場
日本政府は、日中国交回復の時の日中共同声明(1972)で、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを「理解・尊重」すると認めてきた。
- 3.中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを改めて表明する。日本国政府は、中華人民共和国政府のこの立場を十分に理解し、これを尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく自国の立場を堅持する。
今回の高市発言は、この中国との合意に反するものである。また、第二世界大戦時の日本軍による中国への侵略を踏まえれば、中国が日本の武力行使の可能性に対して警戒を高め、批判するのも納得がいく。
3. 安保法制下の集団的自衛権は台湾への米国の軍事的干渉を想定している
しかも、安保法制が認める日本と米国の集団的自衛権の行使は、米国が台湾問題に軍事的に干渉することが前提となっている。バイデン政権下では、4度も台湾が攻撃されたときの米軍の軍事的介入を肯定し、トランプ大統領は、あいまい戦略をとっており軍事介入の可能性は排除されていない。
4. 国連憲章下の台湾に関する集団的自衛権の主張の違法性
米国の軍事介入は、台湾を防衛するためであっても、台湾からの集団的自衛権の行使は国連憲章に反し違法である。51条の集団的自衛権の行使は、「被攻撃国」に対する攻撃の存在と「被攻撃国」からの共同防衛の要請が必要で、国連憲章は国家間関係を定めているから、「被攻撃国」は国際的に承認されている国家であることが必要である。台湾は国家として国際的に承認されているとは言えず、この要件を満たさない。
米国及び日本の台湾問題に関する軍事的関与は、紛争の平和的解決、多国間主義を原則とする国連憲章に違反する。
5. まとめ
COLAPは、日本政府に対しては高市首相の発言の撤回を求め、米国に対しては、米国が台湾問題に軍事的干渉をしないことを強く求める。
COLAPは日本、米国両国に不干渉原則の遵守とこの地域における平和的解決を呼びかける。

