先日、大阪万博会場からARISSスクールコンタクトが実施されました。私もARISS局側の音声を受信し聞いていましたが、大成功だったようです。(そのときの会場の様子はYouTubeの動画でみることができます。)
ARISS とは、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されたアマチュア無線局(Amatuer Radio on the International Space Station)のことです。現在は主に2台のアマチュア無線機が常設され、平常時は1台がFMクロスバンドレピータ(up:145M,down:437M)として、もう1台がAPRSパケットデジピータ(145M)として動作しています。他の小型衛星とくらべて大変強力な電波を送信するため、衛星通信の愛好家のみならず、初心者でも、ハンディ機+小型の八木アンテナ程度の設備でも楽しめるアマチュア衛星局です。
ARISSスクールコンタクト実施時は、クロスバンドレピータの動作が停止され、145M帯のみを使って(スプリット運用で)交信が行われます。聞いたことがある方はご存じかと思いますが、そのときのダウンリンク(ISS→地上)のシグナルは大変強力で、ハンディ機にホイップアンテナ程度でもSが9以上振るくらいの強さです。
ISSは地上から400kmほどの高さの軌道上を動いているので、受信地点にもっとも近づいたときでもその距離は400kmもあることになります。地上で400kmというと、145M帯ではカスカスの信号が聞こえればいい方、という感じになりますが、これは地球が丸いために互いが直接見えない(見通し距離外である)からです。宇宙にいるISSとの間には障害物がないため、信号はとても強く届くわけです。
さて、ARISS局はいったいどれくらいの電力を送出し、どんなアンテナで電波を送っているのでしょうか?最近、ARISSの公式SNSがアンテナの写真を公開していました。これによると、垂直部の長さは約50cmで、145M帯の波長の4分の1です。いわゆる「単一型」の標準的なアンテナ(理論的な絶対利得: 2.14dB)に相当するようです。435M帯はどのように共振させているか不明ですが、3倍の高調波相当として乗せていると思われます。同記事によれば、このようなアンテナが Columbus module に3セット、Service module に1セット設置されているとのことです。
別の情報として、送信電力に関する情報もみつけました。この記事によると、
FMレピータ: 5 W
APRSデジピータ: 10 W
クルーとのコンタクト: 25 W
だそうです。普段受信していて、スクールコンタクトの時はより強力な電波のように感じていたので、この差をみて納得しました。5倍の電力比は、7dBの差に相当します。コンタクトを確実に成功させるために、電力も増強しているのでしょうね。