メシアの読書感想 川端康成【美しさと哀しみと】 | メシアのモノローグ~集え!ワールド・ルネッサンスの光の使徒たち~
- 美しさと哀しみと (中公文庫)/川端 康成
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- 50代の妻子ある作家の男・大木が、30代の頃に不倫し、妊娠、さらには死産までさせてしまった女性・音子に会いに行く場面からはじまります。
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音子が大木と関係していたのは、なんと17歳のとき。音子はその年齢で妊娠と死産を経験し、心と体に深い傷を負って母とともに京都に移り住みます。やがて母は他界し、音子は画家として40歳になるまで結婚も交際も一切しない人生をおくり続けました。
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そんな音子に激しい愛情と哀絶を抱く弟子のけい子……。
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一方、大木は音子との不倫を題材にした小説を発表し、その印税で不自由のない人生を謳歌していました。
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中盤まで読んだ私は、次の3つのオチを予想しました。
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A━━大木がなんらかの形で【男としてのケジメ】をつける。
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B━━師匠の復讐に燃えるけい子が、大木家の誰かになんらかのダメージを与える。
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C━━音子の死産した子供を描いた絵が注目され、天才画家として余生をおくる。
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最終的にBのオチが待ち受けていたのですが、川端康成はCのオチを匂わせつつ、『それは小説を読み終えたあとの空想の中で展開させてください』という感じで作品を終わらせたのかもしれません……。
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それにしても、大木は主人公なのかなんなのか最後までよくわかりませんでした。1番活躍したのは名脇役と目されるけい子ですが、ひょっとするとけい子こそがこの物語の主軸だったのかもしれません。
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けい子の存在や生き方には様々なものが込められています。天涯孤独の身になっても、味方になってくれる人はいるのだということ。力のない人間が世の不条理に対抗するには、同じく不条理な方法しかないのだということ。けい子の生き方こそ弱く不器用な人間そのものだと思います。
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- 6段階評価(論外←いまいち←普通→いい→すごくいい→神)
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ストーリー━━いい
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人物描写━━普通
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心理描写━━いい
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風景描写━━いい
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読みやすさ━━いい
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構成力━━いい
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満足感━━普通
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