メシアの読書感想 重松清【エイジ】 | メシアのモノローグ~集え!ワールド・ルネッサンスの光の使徒たち~

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混迷をくり返す世界を救うべく、ひとりでも多くの日本人が現代に生を受けた意味に気づかなければなりません。世界を救うのはあなたの覚醒にかかっているのです……。

エイジ (新潮文庫)/重松 清
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 山本周五郎賞受賞作。非常に深い作品だと感じます。
 
 
 主人公のエイジは普通の中学生の少年。彼の住む街で凶悪な通り魔事件が多発します。その犯人というのが、エイジのクラスメートだったのです……!
 
 
 ここまで読んだ私はてっきり、その通り魔事件を軸に話が展開されていくのだろうと予想しました。しかし、まったくそうはならず、恋愛、いじめ、部活など、様々な問題とエイジが向き合うストーリーになっています。
 
 
 そんなエイジには両親と姉がいるのですが、これがまたアットホームを絵に描いたような理想的な家族なのです。私はここが本作品の要諦だと思っています。
 
 
 主人公が通り魔の少年の家族だったとか、通り魔被害にあった女性の家族だったとか、そうした設定ならいくらでも話をふくらますことができそうですが、理想的な家庭でぬくぬくと育つ普通の少年を主人公にして、いったいどんな話を書くことができるのだろう?と首をかしげざるをえませんでした。
 
 
 しかし、主人公が普通の少年だからこそ、本作は成り立つ小説なのです。
 
 
 世の中はたしかにメチャクチャだが、それこそが普通のこと━━エイジがそんなドライな現実をそっと教えてくれる作品です。そして普通こそが1番幸せなのだということに気づかせてくれます。
 
 
 ただ、著者の重松清は直木賞作家なのですが、本作は芥川賞系の芸術作品なため、娯楽目的で読んでも楽しむことはできません。限りなく読みやすい文章ですが、通り魔の正体を主人公たちが突き止めるようなお話ではないので、次から次へとページをめくりたくなるような衝動には駆られないので注意してください。
 
 
6段階評価(論外←いまいち←普通→いい→すごくいい→神)
 
 ストーリー━━いい
 
 人物描写━━いい
 
 心理描写━━いい
 
 風景描写━━いい
 
 読みやすさ━━神
 
 構成力━━普通
 
 満足感━━いい
 
 
 
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