中学時代、【落ち着きムード】に包まれていた私を『孤独だよ、孤独だよ』とねちねちあざけ続けていた女子生徒、イウチ。彼女の私に対する嘲笑的言動は数限りないが、彼女は当時、マジで自分のことを“オシャレでカッコイイ都会の女”だと思い込み、世界一オシャレでカッコイイ都会の男であるこの私をバカにし続けていたのである。人間とはどこまで無自覚になれるのか?イウチの頭の構造は少しぞっとするものがある……。
しかし、イウチのような人間にバカにされることには深い意味がある。世界一カッコイイ男であるこの私がバカにされることで、様々な真実が浮かび上がってくるというわけなのだ。
もしもこれを読んでいるあなたが今、家庭、学校、職場などであざけりを受けていたなら、ストーンズでもプリンスでもなんでもいいので、なんらかの有名アーティストのCDやDVDをカバンやバッグに入れておくといいだろう。その瞬間、あなたははばゆい輝きを放つダイヤモンドと化し、逆にあなたをあざける人間たちはイモザルと化す。こう考えれば苦しみや屈辱感をかなり減らすことができると思う。
話は変わるが、ある日コンビニのトイレを店員に無許可で借りたことがあった。そして便秘気味だったので20分ほど使うことになった。
そしてコンビニを出たときである。店員が怒り心頭の様子でこういったのだ。
「トイレを使う際、店員に声をかけてくださいと紙が貼ってあるじゃないですか!挙句の果てにひとりで20分も……客としてのマナーがあると思うんですよね」
たしかにトイレのドアにはそのような紙が貼ってあった。が、私はそれを無視した。なぜなら、【たかがトイレをちょっと借りるくらいのことで、なぜわざわざ定員に許可をもらわなければならないのか?】、その理由がわからないからである。
また、私がひとりで20分使ったことに怒っていたみたいだが、トイレを1時間使おうと2時間使おうと、そんなの人の自由なはずである。20分使われるのが迷惑だというのなら、【便秘気味で長引きそうな方は使用をご遠慮ください】とでも書いた紙を貼っておくべきではないのか?
また、店員は【挙句の果てに】という言葉を使った。このいい方は不適切で失礼である。
もしも私が無許可でトイレを使用したことと、ひとりでトイレを20分使ったこと以外にも迷惑行為をとったならば━━
「トイレを使う際、定員に声をかけてくださいと紙が貼ってあるじゃないですか!さらに●●●●まで。挙句の果てにひとりで20分も……」
━━という感じで適切になる。しかし私がとった迷惑行為はトイレを無許可で使ったことと、ひとりで20分使ったこと、このふたつだけだ。【挙句の果てに】という言葉をもちいるのは明らかに適切ではない。
たとえば、あなたが国語と数学で0点をとり、理科と社会で100点をとったとする。それで親にこういわれらどうだろうか?
「国語0点なの?挙句の果てに数学まで0点なんて」
なんか不自然ではないだろうか?『挙句の果てにという言葉を使うほどではないだろ……』と思うはずである。
また、その日の帰り、バスに乗ろうとしたのだが、バスはアクセルを踏んで出発しようとしているところだった。そこに私が急いで駆け寄り、運転手は出発直前のバスを止めて私を乗せた。そして席に向かうとしたときである。運転手が不遜な口調でこういったのだ。
「おい!お礼くらいいったらどう?」
……もしもバスが完全に出発していたなら『止めていただいてありがとうございます』といわなければならないだろうが、バスはあくまで出発直前のことだった。いったん止めて客を乗せるのは当然のことである。客が運転手に『礼くらいいえ!』などと偉そうにいわれる筋合いはない。
停車場についたあと、私のこの反論に運転手は『へー、納得いかない?感謝の気持ちってのがないのかあんたには!』といった。
それからややたってふたりでバスを降り、同僚の運転手の人に意見を求めに行った。そしてもとのバスに戻ってバスに乗りながら運転手はこういった。
「あんたは若いから大丈夫だろうけど、足腰の弱い老人だったら急いで乗り込もうとして怪我をするかもしれないじゃないか!」運転手はいう。「私はこれから定年むかえるまでの30年間、この考えで運転を続けていきますんで!」
足腰の弱い老人の場合、急いで乗ろうとして怪我をする危険がある。そのためまだ出発直前であろうと、バスを止めて客を乗せるということは例外のことなのだ━━この話、完全に嘘である。なぜならこの話は、バスを降りて同僚の運転手に意見を求め、再びもとのバスに戻ってからようやくし出したものだからだ。もしも本当にそのような考えを普段から持っていたのなら、即座に口にしていたはずである。よってその場でとっさに考えた嘘であることがわかるのだ。
ところで前述の主張なのだが、それなら足腰が強くて転んで怪我をする危険性が低い若者の客なら、バスを止めて乗せるべきだと思うのだが……?
家についた私は、建設会社時代に同居していたアカダさんのとある言動を思い出していた。
私は引っ越しを終えてから昼食をマンションに戻ってとっていたのだが、アカダさんによるとそれはよくないことらしい。その理由というのが━━
「マンションに戻って昼食をとるというのは、昼食のたびに実家に戻っているようなものだ。だからダメだ」
━━という意味不明なものなのである。
それから私は昼食を工場内のとある場所でとることになったのだが、たとえ実家が南極だろうとどこだろうと、仕事の時間に遅れずに戻ることができていれば、昼食のたびに実家に戻り続けても別に問題はないと思うのだが……。
そんな1996年のある日、メシア家に父の両親と母の妹家族がやってきたことがあった。
父の両親━━死ぬまでに1度はその顔を崇めてみたいものだと思っていたのだが、普通の田舎のおじいさん、おばあさん、それだけの人たちだった……。
一方、母の妹家族。母にはふたりの妹とひとりの弟がおり、弟にはまだ会ったことはないのだが、ふたりの妹家族とは小さい頃からちょくちょく会っていた。
三女の人にはふたりの兄弟がいた。そいつらがむかつくガキどもで、私の気分を害す言動を多く残している。しかし大人になってから再会したら、礼儀正しい青年になってはいたが……。
二女の人には私より3つ年上の長男と、私よりひとつ年上の長女がいた。
長男のほうは【スターウォーズ】のマーク・ハミルっぽい感じの美青年。長女のほうもなかなかの美少女だった。
そんな1996年も終わりに向かっていた……。