西暦1995年も終わりに差し掛かっていた頃、私は小説を中古で買い込んで読みあさる日々をおくっていた。
私は飯田譲治の【ナイトヘッド】によって読書が趣味のひとつになったのだが、この世の中には【ナイトヘッド】以外にもおもしろい小説は星の数ほど存在し、私は強烈な苦悩と未来への不安に苛まれながらも、読んでも読んでもなくなることがない傑作小説たちの存在に狂喜をくり返していた。
この頃ファンになった作家は数多くいるが、中でも特に好きな作家は━━
平井和正
森村誠一
島田荘司
京極夏彦
━━この4人である。この4人こそが私の中の【おもしろい小説しか書けない作家四天王】といったところだった。
前述の4人は意識しているかどうかはわからないが、彼らの作品というのは適当にどれを選んで読んでみても、すべてぜったいにおもしろいのである。つまらない作品、内容の薄い作品というのはぜったいに存在しないのだ。まだ読んだことがない人たちはだまされたと思って、前述の4人の作品をどれでもいいから読んでみることをおススメする。
が、しかし、だった。この頃、四天王の作品以上に衝撃を受けた小説と出会ったのである。もはや別格の超傑作【ナイトヘッド】に次ぐほどの衝撃力といえた。その小説とは村上龍の【コインロッカー・ベイビーズ】というものである。
【コインロッカー・ベイビーズ】━━私はこの小説を読んでいる途中、体が宙に浮いているかのような、意識が部屋の天井を突き破るかのような、極めて奇妙な感覚に包まれた。しかし、それはけっして不快なものではなく、不思議だが楽しい夢を見ているときのような感覚に近かった。これは【ナイトヘッド】でも味わったことがない感覚だ。
私はこうしたすばらしい文学に感銘と影響を受け続け、世界に究極の変革をもたらす書物を完成させるべく、おのれの文才をどこまでも追及して磨き続けていった。
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