2000年、夜の酒場。ひとりカウンターで酒をちびちびすするダブのもとにジェリーがやってくる。
「ジェリー、またダメだったよ……」
そういうダブの肩をたたきながらジェリーが隣の席に座る。
「ダブ、また次があるさ」
「次だって?いや、もう次なんてねぇよ」
「そんなことはないさ」
「やっぱり夢は夢だったんだ」
「あきらめるのか?」
「ジェリー、おまえのおかげでいい夢を見させてもらった。けど、ここらが潮時なのかもしれねぇ……」
肩を落とすダブにジェリーがいった。
「待ってくれ。これを読んでくれ。これだ」
ダブはジェリーがカウンターに出した一冊の本を手に取る。
「小説か?俺が読むのはボクシング雑誌だけだ」
「いいから読んでくれ」
ジェリーの強いまなざしにダブは気圧される。
「……わかったよ」
ジェリーが取り出した本の1ページ目にはこう書かれていた。
『神と永遠なる父と、そして私のボクシングの父ダブ・ハントリーに捧ぐ』
そしてダブは著者名を見て質問する。
「F・X・トゥール━━誰だ、こいつ?」
するとジェリーはペンを取り出してかすかに笑みを浮かべていった。
「俺のリングネームさ」
なんとそれはジェリーが70歳にしてはじめて出版社した短編集だったのだ。ジェリーがいう。
「中を読んでみてくれ」
ページをめくり出すダブ。次の瞬間、彼は強い衝撃に襲われた。