道場六三郎らが活躍した≪料理の鉄人≫。これが放送されていた頃、私はまだ10代の子供だったので、番組のおもしろさをいまひとつ理解することができなかった。
それから10数年がたった現在、番組は≪アイアンシェフ≫と名前を変えて復活し、私はなぜかわからないが毎週欠かさず見てしまっている。
料理に関してはまったくわからない。また、全然美食家というわけでもない。しかし、料理人たちの技術と技術のぶつかりあいが妙におもしろく、目を離すことができないのだ。
そんな≪アイアンシェフ≫を見ているうちに、番組に出てくる有名シェフたちの料理の味というものに多大な関心を抱くようになっていった。
私がこれまでの35年ほどの人生の中で最もおいしいと感じた料理は、100円か200円ほどの冷凍牛丼である。
『……な、なんだこのおいしさは?こんなおいしいものがこの世にあったのか……!』━━私はあまりの感動に涙で目をにじませてしまったほどだった。
料理を食べて感動して涙する━━≪美味しんぼ≫などの漫画によく出てくるシーンだが、けっして漫画特有の大げさな表現というわけではないらしいことを知ることができた。
そんな私にとってアイアンシェフたちのつくる料理のおいしさは、まったく想像がつかない次元のものである。
私は食べられればなんでもよく、食というものに関心がほとんどない人間なのだが、アイアンシェフたちの料理だけは死ぬまでに1度は食べてみたいものである。