細木数子の説
さて「六星占術」で運気の悪い時期を予測する際のポイントは、なんといっても“大殺界”です。この時期には、私がしばしば指摘しているように、新しくものごとをスタートさせてはなりません。なぜなら、“大殺界”の時期には、私たちの運命のエネルギーが大幅にダウンしていますから、正しい判断を下すことができないからです。
ところで、この“大殺界”と「因果の法則」については、いったいどうなっているのでしょうか。“大殺界”の時期には、運命のエネルギーが大幅にダウンしているといいましたが、それをもっと具体的にいうと、ものごとに対する判断力も思考力も情勢分析の力も、また闘争心も、とにかく人生に前向きに取り組んでいく際に必要とされる一切のパワーが失われてしまうのです。
“大殺界”は、どんな人にも共通して訪れてきます。十二年という運命の周期のうちには三年間“大殺界”があります。また、“中殺界”“小殺界”もあわせますと、全部で五年間は先のような傾向に支配されるのです。
<陰影><停止><減退>という運命が“大殺界”ですが、この運気の時期はあなたの運命のエネルギーが低下しますから、何をやってもうまくいきません。それどころか、逆にあなたの運命のエネルギーを他人に奪われることすらあります。そうなると、もうどうしようもありません。どんどん不幸が襲ってきます。「何をしてもうまくいかない」「ツキに見放される」という状態で、これこそ“大殺界”の最大の特徴です。
これに対して、<乱気>を“中殺界”といいます。“大殺界”ほどではありませんが、この“中殺界”の時期にも、あなたの運命エネルギーはかなりダウンしてしまいます。そして、もっぱら精神的な乱れが生じ、常識では考えられない行動に走ったりします。ふだんの自分をすっかり失ってしまうのが大きな特徴です。
もうひとつ<小殺界>というのが、“健弱”です。こちらは文字どおり、主に肉体的な健康がそこなわれるという特徴があります。病気にかかったり大ケガをしたりと、その出方はさまざまですが、健康面で障害が出てくるのです。
このうち“大殺界”は、いちばんエネルギーが低下しますから、非常にやっかいです。しかし、この時期の特徴は身体も心もおかしくなってしまうことですから、そうした時期に就職したり、転職をしたり、引っ越しをしたり、結婚したりするのは避けたほうがいいと、私は注意しています。
なんといっても判断力に曇りを生じていますから、そうした時期に下した判断は、将来のことを考えると、あまり信頼できません。
しかし、こうした“大殺界”の時期も、その人が「因果の法則」にのっとった生活を送っていれば、それほどの混乱はありません。というのも、先祖を供養しておけば、その加護が期待できるからです。
メシアの論証
結論からいうと、“大殺界”なるものはぜったいに存在しない。
細木数子によるとメチャクチャ運が悪く、なにをやってもうまくいかない時期が12年周期で5年ほど訪れるらしいが、それは逆に考えるとあとの7年間はそこそこ安定した穏やかな生活をおくれるということである。
さらにいってしまうと、メチャクチャ運が悪くてなにをやってもうまくいかない時期があるなら、真逆のメチャクチャ運が良くてなにをやってもうまくいく時期もあるということである。
ここで大きな矛盾が発生する。
世界には1日1ドル未満の超極貧生活をおくっている人が10億人以上いるが、その人たちの人生は先進国の人間の価値観から見れば毎年が大殺界状態といえるだろう。
メチャクチャ運が悪くてなにをやってもうまくいかない大殺界という時期があるなら、逆にメチャクチャ運が良くてなにをやってもうまくいく時期も少なからずあるはず。
そこで1日1ドル未満の超極貧生活をおくっている世界10億人の人々に次のようなアンケート調査をおこなっていただきたい。
『過去12年の中で突然金運に恵まれ、1日1ドル未満の暮らしから奇跡的に抜け出せた時期はありますか?』━━と。
もしもこの質問に1日1ドル未満の生活をおくっている世界10億人の人々が━━
「ああ、そういえば3、4年前に突然いい仕事が見つかって、高級マンションに家族で暮らした時期がありました。でも、しばらくしてリストラにあって、もとの1日1ドル未満の暮らしに戻ったんですけどね……」
━━もしも1日1ドル未満の生活をおくっている世界10億人の人々がこのような返答をしたのなら、“大殺界”とやらももしかしたら存在するかもしれない。しかし、そんな可能性は万にひとつもありはしないことは無論だろう……。
たしかに人生にはなにをやってもうまくいかない時期はあることはある。しかし人間の長い人生のうち、そんな時期は誰にだって普通にあることだ。大殺界などなんの関係もないのである。
なにはともあれ、毎年が大殺界状態にしか見えない人々が星の数ほどいる現状を考えると、細木数子のいう大殺界というのが完全なデタラメであることがわかることだろう。