1999年12月、ジョン・ウッドは途上国の発展支援団体“ルーム・トゥ・リード”を設立した。そして企業などをまわって資金援助をおこなった。
が━━大企業の肩書を失ったジョン・ウッドを相手にする人は誰もいなかった。このときジョン・ウッドは、多くの人々と地位だけでつながっていたことにショックを受けたという。
……部屋の隅に座り込んで頭を抱えるジョン・ウッド。なにもできないまま時間だけが過ぎ去っていく。その間も貯金残高は確実に0に近づいていった……。
と、そのとき、電話がかかってくる。
「もしもし」
『また本が届いているぞ。贈っておこうか?』父のロバートだった。
「ああ、ありがとう」
『じゃあな』
そういって電話を切ろうとする父にジョン・ウッドは声をかけた。
「あの……父さん」
『ん?どうした?』
「俺、ひとりでなんでもできる気になってたけど……」ジョン・ウッドは嗚咽をもらしながらいう。「なにもできなかった。まちがってたのかな?」
そんなジョン・ウッドに父はいった。
『ビジネスマンだったときのおまえは父さんたちにとって自慢の息子だった。だけど父さんは今のおまえのほうをずっと誇りに思う』
「父さん……」
『≪ひとまねざるか≫……』ロバートはそばに置いてあった絵本を手にとっていった。『覚えてるか?おまえは子供の頃、この本が大好きだったんだぞ。母さんに毎日読んでってせがんてた。夜遅くまでベッドの中でこっそりページをめくっていた。おまえの世界がちょっとずつ広がっていたんだろうな』
父の意外な言葉にジョン・ウッドは不思議な気持ちに駆られた。
「父さん、見てたの……?」
『ああ、見てたさ、ずっと。ジョン、おまえはひとりぼっちなんかじゃないよ』
長らくすれちがっていた親子の心が寄り添う瞬間であった。そして父の言葉に勇気をもらったジョン・ウッドは再び立ち上がる決意をした。
━━数日後、ジョン・ウッドはルーム・トゥ・リードのメンバーたちにいった。
「人生は宝くじのようなものです。どこの国に生まれたかによって幼い子供たちが勝ち組、負け組に分けられてしまう。勝手にそうきめられてしまうんです。でも僕は人生をかけてその不条理に挑戦していきます。子供たちを笑顔にしたいんです」
ジョン・ウッドに拍手の雨が降り注いだ。
やがてジョン・ウッドの熱意は徐々に伝わるようになっていき、少しずつ支援を得られるようになっていった。