帰国して数日たったある日の会社でのことだった。ジョン・ウッドがとある一室の椅子に腰かけていたときである。
「ジョン、おめでとう!君が担当した契約がまとまったぞ。100万ドルの売り上げだ!」
上司がやってきてジョン・ウッドの成功を讃えた。が、ジョン・ウッドは上の空の状態だった。
「……え?」
「どうした?嬉しくないのか?」
そのとき、ジョン・ウッドのケータイが鳴る。
「もしもし」
『あ、ジョン。知り合いが古本を200冊寄付したいっていってるんだけどどうかな?』
その報告にジョン・ウッドは急に顔を輝かせていった。
「本当か?大歓迎だ!」
ジョン・ウッドはいつしか100万ドルの契約より、200冊の本に心を動かされるようになっていたのである。
その日の夜、ジョン・ウッドは人生最大の決断をした。そして数日後の会社の一室━━。
「辞めたいだと?」
聞き返す上司にジョン・ウッドはきっぱりといった。
「はい」
「会社の待遇になにか不満でもあるのか?」
「いえ、生きる目的が見つかったんです」
「生きる目的?」
「高い報酬や地位を求める人生にもう興味はありません。一刻も早く私を待っている人たちのために動き出したいんです。失礼します」そういい終えるとジョン・ウッドは部屋を出ていった。
当初、仕事を続けながらボランティア活動をすることも考えたが、両立は難しいと判断してでの退社だったという。