エリザベスたち4人の舞台≪ビンの中の命≫は歴史研究コンテストで深い感動とともに受け止められた。そしてなんとカンザス州の大会で優勝を果たすことになるのである。
4人はその後も全米各地で上演を続けた。歴史に埋もれていたもうひとりのシンドラーの物語は、カンザス州の小さな町の女子高生たちによって広められていったのである。
しばらくたったある日のユニオンタウン高校。メーガンが感慨深げにいう。
「あんなにたくさんの人に見てもらえるなんて思わなかった」
そんなメーガンにエリザベスがいう。
「なにいってるの。まだまだよ。もっとイレーナさんのことを知ってもらえるようにがんばらなきゃ」
しかしメーガンは無言のだった。エリザベスは不思議に感じて聞き返す。
「なによ?」
「飽きっぽいあなたが『がんばる』ですって」
すべてのはじまりのきっかけをつくったエリザベスとメーガン。ふたりはその場で笑い声をあげた。
「私ね、ほんとはずっと大人を信じたかったんだよね」エリザベスがいう。「イレーナさんのことを調べられて本当に良かった」
と、そのときである。遠くからジャニスとサブリナのふたりが息せき切って駆け寄ってきたのだ。
「たいへん!」
このあとエリザベスとメーガンは、彼女たちに衝撃のニュースをもたらせられることになる━━。
━━2001年5月、4人はポーランドを訪れ、残されたゲットーの壁や絶滅収容所のあと、そしてイレーナが命のリストの入ったビンを埋めたリンゴの木を自分たちの目で確認した。
しかし、4人がポーランドを訪れた真の目的はそれだけではなかったのである……。
━━とある一室に訪れる4人。彼女たちは車椅子に座るひとりの老人の女性と順番に笑顔で抱擁をかわした。
車椅子の老女━━そう。この女性こそイレーナ・センドラーだったのである。ナチス・ドイツに処刑されたはずのイレーナはまだ生きていたのだ。いったいこれはどういうことなのか?
実はイレーナの仲間から賄賂を受け取ったドイツ軍の看守が、処刑の前日にイレーナを逃していたのである。さらに看守は逃がしたことがばれないように、処刑者リストにイレーナの名前を書き込んでおいたのだという。かくしてイレーナは処刑をまぬがれることができていたのだ。