メシア的感動のアンビリバボー傑作選  もうひとりのシンドラーを探して 第5話 | メシアのモノローグ~集え!ワールド・ルネッサンスの光の使徒たち~

メシアのモノローグ~集え!ワールド・ルネッサンスの光の使徒たち~

混迷をくり返す世界を救うべく、ひとりでも多くの日本人が現代に生を受けた意味に気づかなければなりません。世界を救うのはあなたの覚醒にかかっているのです……。

 ユニオンタウン高校の教室で、エリザベスたち4人はなにやらセリフを発していた。なんとイレーナの物語を演劇にまとめ、歴史研究コンテストで発表することにきめたのである。パネルやスライドでまとめる形では伝えきれないと感じたのだ。

 

 
 そして1ヶ月に及ぶリハーサルの末舞台は完成。タイトルは≪ビンの中の命≫と名づけられた。

 

 
 むかえた2000年2月、4人はクラスメートたちの前ではじめて≪ビンの中の命≫を披露したのだが……。

 

 
 ━━学校帰り、4人は肩を落として無言のままの状態であった。≪ビンの中の命≫に対するクラスメートたちの感想が辛辣なものだったのだ。

 

 
 「こんなんじゃ、歴史コンテストで恥かくだけよね……」エリザベスがため息まじりにつぶやく。

 

 
 しかしそのとき、メーガンが開き直ったような明るい口調でいった。

 

 
 「歴史コンテストなんてどうでもいいじゃん」

 

 
 「え!?」びっくりして聞き返す3人。

 

 
 「私、調べているうちに思ったの。イレーナさんの思いを受け継いでいきたいって」

 

 
 「たしかにそうよね」

 

 
 「でしょ?演劇を選んだのだって、イレーナさんの思いをじかに伝えるためじゃない。このままでいいんだよ!」

 

 
 メーガンの言葉によってエリザベスの表情に笑顔が戻る。

 

 
 「そっか、このままでいいんだ!」

 

 
 4人の中で大きな変化が起こりはじめていた。歴史コンテストで評価されるよりも、イレーナの思いをしっかりと受け継いでいきたい━━そう思うようになっていたのだ。

 

 
 実はイレーナもある人の思いを受け継いでいた。それは父親のスタニスワフである。

  

 
 故郷の村に死亡率の高い伝染病が流行したとき、医者だったスタニスワフはほかの医者が逃げ出す中、貧しいユダヤ人たちを無償で診療したという。しかしその結果、みずからも伝染病に感染し、取り返しのつかないことになってしまったという。

 

 
 ベッドに横たわるスタニスワフは娘のイレーナにいう。

 

 
 「イレーナ、悲しむことはない。パパは後悔していないよ。誰かが苦しい思いをしていたら、知らないふりをしてはいけない。なにがあっても助けようとする努力が必要なんだ」

 

 
 それが大好きだった父が最後に残した言葉だった━━。

 

 
 イレーナはそんな父の遺志を受け継ぎ、命懸けでユダヤ人の子供たちを救ったのである。その想いを受け継いだエリザベスたち4人は歴史コンテストの直前、最後のリハーサルとして町の教会を舞台にし、町の人々の前で≪ビンの中の命≫を披露した。

 

 
 そして劇が終わった瞬間、客は総立ちになり拍手の雨が4人に降り注いだ。それから4人は客の握手攻めに合う。アメリカ人がはじめて知る物語≪ビンの中の命≫は深い感銘を与えたのだ。

 

 

 

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