━━市議会の会議室。議員の男性が押し掛けてきた商店街の人々に顔を紅潮させていった。
「ストライキをやるですって!?困るのはあなた方なんですよ!」
大型スーパーを誘致したい市と商店街の間には深い溝ができていたのだ。
「俺たちがのたれ死んでもいいってのか!?」商店街のリーダーであるレストラン経営者の男性が叫んだ。
その声を偶然会議室前にきていたヴィッキーが耳にする。
「のたれ死に……」
そのときヴィッキーの脳裏に浮かんだのは、全身しもやけだらけで死にかかっていたデューイの姿だった。
「……私、いったいなにを悩んでいたのかしら」そしてヴィッキーは腕に抱いていたデューイにいった。「デューイ、私、手術するから。ちょっとの間図書館にこれないけど、その間辛抱しててね」
するとデューイはヴィッキーの腕を飛び出して会議室に入っていった。
━━会議室ではレストラン経営者の男性が息巻き続けていた。
「クソ、大型スーパーにかなうわけねーじゃねーか……」
そんな彼の目の前にデューイがあらわれる。
「なあ、デューイ」
「こうなったら、スーパーの本社に怒鳴り込みに行くしか……」
そういうティムに商店街の人々は賛同の声をあげた。
「バカな真似はやめてくれ」議員がいう。
「おまえの指図なんか受けるか!」レストラン経営者の男性がつっぱねる。
そのとき、デスクの上のデューイがとことこと議員のほうに歩いていった。
「なんだよ、おまえは俺たちの味方じゃねーのか?」
デューイはなにかいいだけに議員の前でたたずんでいた。
「おい、もし店がつぶれたら、俺たちを養ってくれるのか?」
「なんとかいえ!俺たちを見殺しにする気か!」
商店街の人々の怒号が再び湧き上がり出したそのとき、デスクの上のデューイが『ニャ~ン』と鳴き声をあげた。
「みんな、ちょっと待ってくれ」レストラン経営者の男性が商店街の人々を制した。「デューイはなあ、凍てつくような零下15℃の夜に捨てられてたんだぞ。それでもこうして……なあ、ヴィッキー」
いつしか会議室に姿をあらわしていたヴィッキー。
「あのとき、拾い上げたとき、目はほとんど見えず足もしもやけでちぎれそうなのに、必死に小さい頭を私の胸に押しつけてあたたまろうとした。必死に生きようとしてたわ。あきらめずに……」
「あきらめずにか……」家具店のティムがつぶやいた。