どれだけ走っても出口が見つからない迷路に迷い込んだリュウとザオチン。
そんなある日のことだった。なんとザオチンの娘が村の子供たちからいじめを受けていたのである。
「あなたたち、なにしてるの!」ザオチンがそう叫んで駆けよると、いじめっこたちは笑いながら走り去っていった。
いじめを受けていた娘を抱きしめてなぐさめるザオチン。その様子をリュウは遠くから見つめ、ある重大な決心をするのであった。
数日後の夜、リュウがザオチンに向かっていう。
「考え直すなら今のうちです。やはり僕ひとりで……」
そんなリュウの胸に飛び込むザオチン。
「私、覚悟はできています。きっと子供たちもわかってくれます」
胸の中のザオチンをそっと抱きしめるリュウはその晩、ついに決意を行動に移すのであった……。
翌朝、高灘村はなにやらバタバタとした雰囲気に包まれ、村人たちは興奮気味の様子で噂話をしていた。
「たいへんだ!ザオチンが消えた!」
「あの男も一緒だ!」
リュウとザオチンの一家が忽然と姿を消してしまったのである。
「ここいらの村にはいねぇようだ」
「心中か?なにも死ぬことはねぇのになぁ?」
その後もふたりの姿を見た者はなく、月日がたつにつれ悲劇の恋人たちは人々の記憶から消えていった……。
━━それから約50年後の2001年、半坡山を訪れた登山者によって山頂に続く謎の階段が発見されたのである……。