メシア的感動のアンビリバボー傑作選  世界一小さな劇場アマトオペラ 第4話 | メシアのモノローグ~集え!ワールド・ルネッサンスの光の使徒たち~

メシアのモノローグ~集え!ワールド・ルネッサンスの光の使徒たち~

混迷をくり返す世界を救うべく、ひとりでも多くの日本人が現代に生を受けた意味に気づかなければなりません。世界を救うのはあなたの覚醒にかかっているのです……。

 トニー47歳、サリー50歳のときのことである。サリーの体を乳ガンがむしばんでいたのだ。

 

 
 しかしサリーはトニーに、病気のことをほかの人にはけっしていわないようにとお願いする。それからもサリーは薬での治療を続けながら舞台に立ち続けた。

 

 
 ━━ときは流れ2000年、公演終了後のアマトオペラの舞台にトニーとサリーのふたりの姿があった。つまりサリーはガンを克服したのである。

 

 
 ふたりは変わらずアマトオペラで公演を続けており、舞台に出かける前は自宅でまかない料理をつくって団員たちとともにとるのだ。その様子はまさに大きな家族そのもの。そしてその中にはかつて観客だった人も含まれているという。

 

 
 「アマトオペラをはじめて観た頃、私は私生活のトラブルでひどく落ち込んでいました。だけどトニーとサリーの笑顔に励まされ、以来ここで働くようになったんです」

 

 
 多くの仲間たちと活動を続けるトニーとサリー。が━━80歳のトニーの体に前立腺ガンが発見される。しかしトニーは放射線治療を受けながら舞台の仕事を続けた。かつてのサリーと同じように。そしてガン発見から3ヵ月後、ガン細胞が消えていたという。

 

 
 むかえたアマトオペラ設立50周年記念パーティー。その席でトニーはサリーを胸に抱いてうたった。55年間片時も離れずに暮らしてきたふたりにとってこの日の宴は格別の喜びであった。

 

 
 ……ときは流れ2006年、86歳になったトニーは変わらず舞台の演出を手掛けていた。それは以前と変わらない風景だが、ひとつだけ大きなちがいがある。

 

 
 トニーのかたわらにサリーの姿がないということだ。

 

 
 実は設立50周年記念パーティーの3ヵ月後、サリーは83歳の生涯を閉じたのだという……。

 

 
 トニーはいう。

 

 
 「サリーが亡くなったとき、私は劇場を閉めてしまおうと考えました。しかし自分に問いかけたのです。サリーがそのことを望むだろうか?と。この劇場を終わらせてしまったら、若い歌手たちのチャンスを奪うことになってしまう。これからもこの劇場を続けていくことが私の使命だと気がついたんです」

 

 
 アマトオペラには今日もたくさんの客が訪れている。サリーがいなくなっても以前と変わらない笑顔があふれている━━。

 

         世界一小さな劇場アマトオペラ 終わり

 

 

 

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