現在、バラエティー界で渋い存在感を放つひとりのベテランピン芸人がいる。その人こそイジリー岡田だ。
私は彼をテレビ史に残る伝説の深夜番組≪ギルガメッシュナイト≫ではじめて知ったのだが、それから20年ほどが経過する今もなお高度な笑いを我々に提供し続けてくれている。
イジリー岡田はピン芸人だがひとりコントだけでなく、友人芸人と組んでのチームコントも非常にうまい。さらにそれにつけくわえ、ものまねオンリーの芸人も真っ青の超凡なものまね芸まで兼備しているのだ。
イジリー岡田のものまねをはじめて見たのは日本テレビ≪AKBINGO!≫でのことだった。それまでイジリー岡田は普通のピン芸人だとばかり思っていたので、あらゆるジャンルの有名人のものまねをそつなくこなすイジリー岡田のその姿には衝撃を覚えたものである。
そのイジリー岡田が披露したものまねはざっとあげるだけでも━━
山下達郎
カーリー
北島さぶちゃん
戦場カメラマン渡辺さん
━━などである。これだけでも芸の幅の広さが容易に理解できることだろう。
そんなイジリー岡田のものまねの中で個人的にピカイチに感じたのが、プロレスリング・ノアの総帥だった故・三沢光晴のものまねである。
しゃべり方、仕草、たたずまいなど、なにもかも見事としかいいようがなかった。残念ながらAKBの娘たちの中に三沢光晴を知っている人はいず、イジリー岡田の三沢光晴のものまねがどれほどのハイクオリティーなものかは理解されなかったが、メシアのこの私はしっかりとイジリー岡田の非凡な芸達者ぶりを目に焼き付けていた。
が、イジリー岡田の“ものまね芸人”としての伝説話はまだ終わりではない。それはテレビ東京の≪週刊AKB≫でのことだった。ゲストのイジリー岡田が魚の帽子をかぶって『ぎょぎょぎょ~』と甲高い声でいいながらカメラの前に姿をあらわしたことがあるのである。
そう。あのさかなくんのものまねなのだ。しかも驚くべきことに、さかなくんのものまねはもともとのものまねレパートリーの中に入っていなかったものらしいのである。つまりイジリー岡田はそのときの状況に合わせて、とっさの判断で即興でさかなくんのものまねをやってのけたというわけなのだ。無論、完成度は非常に高いものであった……。
こうした点からもイジリー岡田という芸人の頭の回転の速さ、知識の豊富さ、芸の幅の広大さを痛感してしまう。また、イジリー岡田はかつぜつよくスピーディに論理的に話を進められる人であり、私は若い芸人たちにはぜひ彼をひとつのお手本にしてもらいたいと思っているほどである。
が━━まだまだ話は終わりではないのだ。イジリー岡田の代名詞である“高速ベロ”でわかるように、女性たちからは“キモキャラ”扱いされて距離を置かれているイメージがある。しかしイジリー岡田という人は意外にシャイでいい人だということは、テレビ出演時の彼の言動を追い続ければ自然と理解できるはずだ。
キモキャラとのこのギャップが最高にセクシーなのである。ジョニー・デップよりも、福山雅治よりも、木村拓哉よりも、小栗旬よりも、なにをどう考えてもイジリー岡田のほうが遥かにセクシーガイだ。この結論に異を唱える人は未来永劫、世界のどこにもあらわれることはないだろう。