経緯
上告会社Yの支配人Aは、被上告会社Zの主任Bが、横領する目的で取引を行おうとする意図を知っていたが、そのまま取引を行った。
その後、Y会社はZ会社に代金の請求を行ったが拒否されたため裁判で争った。
争点①代理人の法律行為は本人に帰属するはず。
争点②Z会社の使用人BによってY会社が受けた損害を、使用者責任に基づいて賠償しろ。
結果
請求は棄却。Z会社が救済された。
判示
代理人の権限濫用と民法93条
要旨
代理人が自己または第三者の利益を図るため権限内の行為をしたときは、相手方が代理人の意図を知りまたは知りうべきであった場合に限り、民法第93条但書の規定を類推適用して、本人はその行為についての責に任じないと解するのが相当である。
理由
第1点
上告会社の支配人Aは、被上告会社の主任Bらの権限濫用の事実を知りながら、本件売買取引をなした。
第2点
代理人が自己または第三者の利益をはかるため権限内の行為をしたときは、相手方が代理人の意図を知りまたは知ることができた場合に限り、民法93条但書の規定を類推して、本人はその行為につき責に任じないと解するを相当とする。
<要約>
代理人の権限濫用は、相手方が濫用の意図を知っていた又は知りえた場合にのみ、本人は責任を負わない。
第3点(使用者責任について)
民法715条にいわゆる「事業の執行に付き」とは、被用者の職務の執行行為そのものには属しないが、その行為の外形から観察して、あたかも被用者の職務の範囲内の行為に属するものと見られる場合をも包含するものと解すべきである。
したがつて、被用者がその権限を濫用して自己または他人の利益をはかったような場合においても、その被用者の行為は業務の執行につきなされたものと認められ、使用者はこれにより第三者の蒙つた損害につき賠償の責を免れることをえないわけである。
しかし、その行為の相手方たる第三者が当該行為が被用者の権限濫用に出るものであることを知っていた場合には、使用者は右の責任を負わないものと解しなければならない。
けだし、いわゆる「事業ノ執行ニ付キ」という意味を上述のように解する趣旨は、取引行為に関するかぎり、行為の外形に対する第三者の信頼を保護しようとするところに存するのであつて、たとえ被用者の行為が、その外形から観察して、その者の職務の範囲内に属するものと見られるからといつて、それが被用者の権限濫用行為であることを知つていた第三者に対してまでも使用者の責任を認めることは、右の趣旨を逸脱するものというほかないからである。
したがつて、このような場合には、当該被用者の行為は事業の執行につきなされた行為には当たらないものと解すべきである。
<要約>
事業の執行のために使用人が行った取引の責任は使用者が負わなければならないが、取引相手が使用人の権限濫用行為を知っていたもしくは知りえた場合には、使用者は責任を負わない。