そもそも、三重県は「何地方」なんだろうか。

 小学校で習った「社会科」の地理分野的には、「近畿地方」だったと記憶している。
 このあたりの「地方区分」は、省庁によっても異なっていることが多いため、筆者的にはこの「小学校で習った」区分が「一番公平」?だと思っている。

 桑名辺りだと微妙だが、方言的にも三重県の大半の地域では、所謂「関西弁」系に近く、名古屋圏のような「どえりゃあ」「~でかんわ」的な言い回しは、あまり耳にしない。

 ところが、日常生活的には、少なくとも「伊勢」地方は名古屋方面に向かっての動きが多い。
 「中京」と言われれば、愛知・岐阜・三重の3県、「東海」と言われればそれに静岡を加えた4県を指すことが一般的であろう。この組合せは、日常生活や経済面において、確かに自然に感じられることが多い。

 省庁の地方分支局の名称では「近畿」を冠するものがほとんどで、「関西」と名乗るものはすぐに思いつかない。ただし「英訳」版では「Kansai ~」としている例もあるようだ。
 日本郵便でも「近畿支社」であり、これは郵政省時代の「近畿郵政局」から変わっていない。
 しかし、その所管区域に三重県は含まれない。「東海郵政局」から引き継がれた「東海支社」に属しており、所管JCも「名古屋貯金事務センター(古くは名古屋地方貯金局)」である。

 一般的には、「近畿」と「関西」の違いは「三重県を含むかどうか」というニュアンスで捉えられていることが多いと思う。
 「関西」に三重県が含まれないのは、「関西」を「関所の西側」という意味で捉えた場合に、そこで言う「関所」が一般的に不破関、鈴鹿関、愛発関を指す、と認識されることによると思う。
 逢坂関を挙げる事例もあるが、それだと滋賀県も「関西」ではなくなってしまい、「翔んで埼玉」でもネタになった「琵琶湖の水止めたろか」に波及しそうだ。実際に琵琶湖の水を止めると、滋賀県の大半が水没する……のでは、という気もするが。
 一方で、三重県が「近畿」に含まれる、と捉えられる背景としては、近畿日本鉄道の存在が少なからず影響しているとは思う。

 「近畿」という言葉に近いものとして、「畿内」がある。
 これは、旧・律令国のうち大和・山城・摂津・河内・和泉の5国をいう。江戸期以前の「都」に近いエリアというニュアンスなんだろうが、その意味でも「近畿」と似たような言い回しだと思われる。
 ただし、「畿内」という定義は古いため、現在の京都などが「都」となるよりも前から使われていたこともあり、どちらかと言えば「大和」が中心の考え方なのだろう。平安京から見れば、山一つ越えれば近江国であり、いきなり畿内ではなくなってしまう(近江は「東山道」に属する)。また「琵琶湖の水……」(以下略)。

 三重県の中でも「伊賀」地域(現在の伊賀市・名張市)は、近畿日本鉄道で直結していることもあり、名古屋だけではなく大阪方面への繋がりも少なくないエリアかも知れない。

 あくまでも「個人の感想」ではあるが、三重県は「顔は名古屋に向いているけど、心(マインド)やルーツは『関西』」のように感じている。
 伊勢神宮などの存在も大きいかも知れない。
 三重県内には、都や朝廷との繋がりを想起させる史跡などが多数ある。
 現在では経済活動的な要素で、名古屋方面との日常的な繋がりが大きくなってはいるのだが、奈良や京都に都があった時代から続く「都に近く、最高位の神社もある」という伝統がバックボーンになっているように思う。

 また、違った視点で見ると、今回の遠征先である鈴鹿市は、四日市市、津市に続く県内第三の人口を擁する街であり、衆議院議員選挙の選挙区として見た場合、津市などの1区、四日市市(一部を除く)以北の3区の間に設定されている「三重県第2区」の中心都市でもある。
 この2区は、四日市市の一部や亀山市、伊賀市、名張市と一緒に構成されている。前述の「伊賀国」はすべてここに含まれ、自動車のナンバーも「三重」「四日市」「鈴鹿」の3つが含まれる、ちょっとカオスな選挙区ではある。
 ちなみに、三重県の自動車ナンバーとしては、他に「伊勢志摩」があるが、これは全て「4区」に属する市町村で登録された車に使用される。

 (つづく)