※ 本稿は、かつて「100円玉友の会」の会報「P.S.」の記事として執筆したものの「復刻盤」である。そのため、所在地表記などの市区町村名や郡名は、当時のものである。

 

 翌17日(金)朝、7時過ぎにホテルの食堂で朝食を摂る。

 8時少し前に、Sクラスで予約しておいた駅レンタカーの営業所に行くと、かなりくたびれたマツダ・ファミリアで、しかも2ドアであった(編註:詳細な記録はないが、恐らくE-BHA3S/1.3Lモデルだと思われる)。3人で乗るには少し辛いが、まあ贅沢は言っていられない。

 

 まずは筆者の運転で、熊野川沿いに国道168号線を遡っていく。途中、“道の駅・瀞峡街道熊野川”を発見。“道の駅スタンプコレクター”の酷道ドライバー氏の希望で立ち寄る。

 

 本来は熊野川町辺りからスタートするつもりだったが、そこそこ順調に進んだため、東牟婁郡本宮町からスタートすることにした。

 丁度、47121:湯峰局の前に着いた時点で9時を迎え、ここからスタート。通算4,170局目の貯金で、4,170円を預けると“日本最古の温泉温泉湯峰郵便局”と、いきなりの“宝”である。

 続いて、酷道氏の運転に代わり、47046:本宮局へ行くと、これまた“宝”であった。中央にあるのは、熊野権現では「神の使い」とされる“八咫烏”のようである。

 

 今度は国道168号線を新宮方向に戻り、47092:請川局へ。ここも温泉マークを中央に配した“宝”の局であった。

 局名が右書きなのが印象的だ。

 

 そして東牟婁郡熊野川町に入った47759:敷谷簡易局までも“宝”である。簡易局の“宝”ゴム印は珍しい(編註:その後、簡易局のほうが「力」の入ったゴム印を作る時代が来るのだが)

 この敷谷簡易局、建物が路面から階段で上がったかなりの高さの上に建っており、見晴らしも良いし、遠くからでも見える。国道からは熊野川を挟んだ対岸になるが、国道からでも見えるかも知れない。しかし、国道からこちらへ渡る橋は少なく、知らずに来ると「くぅ~、行けねぇ~(涙)」になるかも知れない。

 なお、4月5日と8月15日も休みなので注意が必要である(編註:現在は休まないようである)。4月5日は地元の祭だそうだが、8月15日は旧盆(月遅れ盆)だろうか? 少し遅い気もするが、終戦記念日だから、ではなかろう。

 

 宮井大橋から国道169号線に移る。168号線を新宮方面に進めば、日足局、そして更に対岸の三重県南牟婁郡紀和町に渡れば、和気局や楊枝川簡易局などがあり、昨夜の“車中作戦会議”(という名の酒盛り)でも検討したのだが、今回は先があるのでショートカットする。

 

 辿り着いた47071:九重局も“瀞峡九重郵便局”と、シンプルながら“宝”の局であった。まぁ、これが普通で、本宮町の3局が「力入り過ぎ」の感もあるが。この局には、エコーはがきが山ほどあった。見本に出ているだけで5種類、「他にないか?」と訊くと、若い局長が金庫から更に10種類ほど出してきた。

 「都会とは違って、田舎ではちっとも売れないんで……」と言いながら、全く未開封のはがきの包みを開ける。中にはあの(当時、物議を醸した)商工ローン最大手の「日栄」のものまであり、時ならぬ“エコーはがき品評会”になった。

 

 さて、このまま国道169号線を進めば瀞峡だが、それでは紀和町が完全に残ってしまう。

 一旦、国道311号線に入り、南牟婁郡紀和町22142:入鹿局を目指す。紀和町は三重県になるが、この道順では和歌山県東牟婁郡熊野川町⇒奈良県吉野郡十津川村⇒和歌山県東牟婁郡熊野川町飛地⇒三重県南牟婁郡紀和町……という順に通過する。ここは三重・奈良・和歌山の3県の県境が入り組んでいるだけではなく、和歌山県の飛地が三重県と奈良県に挟まれて点在している。

 入鹿局のゴム印も“丸山千枚田のある町・入鹿郵便局”となっており、局内に掲示されていた丸山千枚田の写真を見た酷道氏が感心している。局員の話では、5月が一番いい季節らしく、酷道氏、そのうち5月に再訪するかも知れない。何より、今回紀和町はこの局だけしか訪問せず、後の局は残してあるので、再訪にしても楽しみはありそうである。

 

 さて、郵ちゃん。氏に運転交替し、国道311号線から169号線に戻る。この分岐点は、奈良県吉野郡十津川村だが、国道169号線は和歌山県東牟婁郡熊野川町飛地に入り、田戸トンネルを抜けて、再び奈良県吉野郡十津川村に入る。

 この田戸トンネル、一昨日まで工事のため時間規制で通行止めをしており、運が悪いと2時間近く待たされることになっていたらしい。

 一見、運よく回避しているように見えるが、実は、この先に立ちはだかる“巨大な壁”の伏線であることは、知る由もなかった。

 

 国道から“瀞八丁”の案内看板に従って脇道に入り、突き当りのすぐ手前に45018:瀞局があった。局番からわかるように、所在地は奈良県吉野郡十津川村である。が、郵便区番号は“647-15”と和歌山県の番号で、そのためか熊野川町の集配を受け持つ日足局の郵便車が止まっていた。

 瀞局のすぐ先が、瀞峡の渓谷を見下ろせる場所で、瀞八丁バス停もある。対岸は三重県南牟婁郡紀和町で、すぐ右手で合流している葛川の向こうは和歌山県東牟婁郡熊野川町飛地という3県の接する場所、ここが瀞峡である。こういう観光地にありながら、瀞局のゴム印はごく普通のモノであった。まぁ、瀞峡観光は、熊野川町から観光船で川を遡ってくるのがメインであり、そうするとこの局は、断崖絶壁の上になってしまい、来ることもできないのだが。

 

 (つづく)