4時過ぎに、船室の照明が再点灯した。4時半前には、三宅島入港のアナウンスが流れ、この便は三池港に入るらしい。

 慌ただしく下船の準備をして、接岸を待つ。

 

 4時45分、定刻よりもかなり早く、三宅島・三池港に入港。

 辺りは、まだ真っ暗である。

 

 こんな時刻に到着してもすることもないのだが、今回はレンタカーの手配を頼んだら、入港地まで迎えに来てくれることになっていた。

 大島や八丈島などなら、それなりに大きなレンタカー会社もあるのだが、三宅島だとそうはいかない。一応、2~3社の存在は確認できたが、細かい条件とかを確認して比較するのが面倒だったので、今回はJCBの「ザ・クラス コンシェルジュデスク」に手配を頼んだら、営業時間でなくても送迎を引き受けてくれた。

 ただし、入港地が三池、帰りは航空路なので坪田だから、神着にあるこのレンタカー会社だと、島の真反対ではある。

 本業はタクシーらしく、回送表示のタクシーで迎えに来てくれた。オヤジさんは無口で、営業所まではほとんど無言。営業所でも免許証のコピーを取っただけで、支払いは返却時でいい、とだけ言う。

 営業所の向かいに、同じく経営しているらしいガソリンスタンドがあり、そこに鍵を付けたままの軽自動車があるから、それに乗って行け、ということらしい。

 

 そこに居ても仕方なさそうなので、取り敢えずエンジンをかけ、元来た道を引き返して三池港に行ってみた。

 次第に夜が明けてきた。

 ターミナルビルが、そこそこ大きいので、中に入ってみると、長椅子が並んでいるが誰もおらず、ここで暫く休憩させてもらうことにした。

 待合室内には、スタンプも置いてあった。

 ターミナルから南西側を見ると、雲を被った御蔵島と、三宅島空港(MYE)のRWY20エンド付近が見える。

 

 実は、この港。始めて来る場所ではなかった。

 2002年に、御蔵島と利島という、伊豆諸島の中でも「行きにくい場所」の二つをまとめて一日で巡る、という暴挙に出て、結果的にテーリングには成功したものの(実はこの時がJN1ZCT・100円玉友の会の「ALL東京コンテスト」で、夕方には都内に戻ってエントリーしなければならず、利島の公衆電話から「慰労会」会場の居酒屋に電話した)、利島に「島流し」となった時に遡る。

 その当時、三宅島には全島避難指示が出たままで、防災関係者のみが島に出入りしている状況だった。たまたま御蔵島まで乗った「かめりあ丸(JG4619)」は、本来、竹芝出航後は御蔵島にのみ寄港し、八丈島に向かうのだが、三宅島に向かう防災関係者が何人か乗っており、三宅島に寄港するというのだ。勿論、その関係者のみが下船し、一般の客は船内から出ることはできないのだが、その時に寄港したのが、この三池港だった筈だ。

 下船こそしていないが、三宅島、それも三池港に寄港した経験はあるのだった。

 

 このような例は、実は淡路島がそうで、明石から船で渡ったものの、下船せず引き返す、という条件の割引券で乗ったのだ。時間的に、下船しても何もできないと思い、せめて携帯電話のGPSを利用する「位置ゲー」などで「足跡」を残そう、と行ってみた。所謂「対岸取り」でもいいのだが、実際に接岸はしてみようか、と思ったのだ。

 その他にも、例えばこの界隈でも、下田から新島や神津島などを結ぶ神新汽船が、途中下船しない条件の「一周」乗船券を、片道の1.5倍程度で販売していたりする。一定のニーズはあるのだろう。

 

 そんなことで、少し休憩して、それでも時間が余るから、阿古の手前から林道に入り、雄山の中腹にある「七島展望台」に行ってみた。

 ……が、南西からの強い風は湿気を帯びているようで、雄山にぶつかって雲になってしまう。50~60メートル程度の標高を過ぎると、辺り一面「霧」だらけになった。

 軽自動車でもすれ違いが困難な細い道を登りきると、駐車場がある場所に着いた。一応、公衆トイレなども整備されてはいる。が、辺りは霧で視界も十数メートル程度。

 晴れていれば、伊豆七島を見渡すことができる……のだろうが……

 元々レストハウスだったらしい廃墟は、噴火を受けて骨組みだけになっていた。

 これは管理事務所か何かだった建物。内部はゴミなどで一杯だった。

 残されている案内板によれば、かつては雄山の山頂に登ることもでき、この辺りにも牧場やちびっこ広場などといった施設が整備されていたことがうかがわれる。

 管理事務所跡の裏には、溶岩流の流れた丘があり、

こんなサイロも残されているが、何やら奥から妙な音がする。何かの「警報」かと思い、辺りを探したが、

こんな装置から出る音だった。正体は、わからない。

 

 長居するような場所ではなさそうで、20分ほどで撤収する。

 元来た林道を下って行くが、辺りには、溶岩流によって「立ち枯れ」になった木が、不気味な姿で残されている。

 

 まだ9時になっていないので、坪田の三宅島空港まで引き返し、郵便局の窓口が開くまで時間調整する。

 

 ~ つづく ~